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なぜ私は『FE if』のシナリオに没入できなかったのか④透魔編

2026/04/15
(この記事の文字数: 9849)

本記事は「なぜ私は『FE if』のシナリオに没入できなかったのか③白夜編の続きです。この連載の最後のパートになります。(第一回はこちら)

最後は「透魔編」です。 このルートでは、戦記物にミステリーの要素を融合させるという極めて野心的な試みがなされています。しかし、残念ながらその試みは、ゲームシステムとの不整合や、ファンタジー世界としてのルールの欠如によって、空回りしている印象が拭えません。相変わらずの突然死やミステリーのために「生贄」にされたキャラクターたち、さらには、本来本編で語られるべき「物語の真実」が、追加コンテンツ(DLC)へ完全に切り離されてしまっているという販売形態への疑問も抱かずにはいられませんでした。

ストーリーの進行順に沿って、一つひとつのシーンで感じた違和感を詳細に言語化していきますが、内容はほぼ全編にわたって批判的なものとなります。本作のシナリオを好意的に捉えている方には不快な表現が含まれる可能性があるため、あらかじめご承知おきください。

透魔編:謎解きミステリーと絶望的に噛み合わないゲームシステムと世界観

支援会話制限でバレバレになってしまった犯人

本作は「社長が訊く」でも語られているように、漫画『金田一少年の事件簿』の原案者である樹林伸氏がシナリオ原案を担当しています。特に透魔編は殺人事件とその犯人探しを軸にしたミステリー仕立ての展開となっており、ファンタジー戦記と推理要素の融合という試み自体は、FEシリーズの新たな可能性を感じさせる興味深いコラボレーションでした。

しかし、この仕掛けを根底から破壊していたのが、ゲームシステムとの致命的な不整合です。 このルートでは、ギュンターだけが「支援会話無効」になっていました。

クリムゾン死亡イベントが起きる前までは「ストーリーの途中で離脱するから制限されているのだろう」と推測していました。ところが、いざ殺人事件が起き「犯人は誰だ?」という局面になると、「支援会話が制限されてるギュンターしかいないだろう」とメタ事情によって犯人が透けて見えてしまったのです。

実際、X(旧Twitter)でアンケートを取ってみると、約60%ものプレイヤーが「支援会話で察した」と回答しています。

シナリオ上ではミスリード要員(ロンタオ)の配置やギュンター自身のふとした口滑りなど、まさに『金田一少年の事件簿』を彷彿とさせる伏線が張られていました。しかし、それら全ての工夫が「支援無効」という、システム側のあまりに分かりやすいネタバレによって台無しにされています。

ハイドラに洗脳されているキャラクターと絆を結ぶわけにはいかない、という設定上の配慮は理解できます。しかし、システムの「穴」を埋めるための工夫はいくらでもできたはずです。たとえば、他にも支援会話を制限したキャラクターを複数人用意して特定の人物だけを浮かせないようにしたり、全ルート共通でギュンターの支援を制限したり、ギュンターとの支援会話をどっちとも取れる特殊な会話内容にする手もあったと思います。

大御所の原案によるミステリーパートという最大の目玉が、システム側の配慮不足によって自壊してしまっている。ここでもまた、本作を貫く「ブラッシュアップの欠如」が、本来のポテンシャルを大きく削ぐ結果となっており、非常に勿体ないと思いました。

何でもありのファンタジーな世界で機能しない推理

また、物語内の推理ロジックそのものにも、『if』の世界観との大きな乖離が見られます。透魔編23章でリョウマは、「あの時吊り橋から飛び降りたのは俺たちしかいなかった。その直後にカムイが襲われた以上、俺たちの中に犯人がいる可能性が高いと考えるのが自然だ」という、密室で起こるミステリーにありがちな推理を披露します。

しかし、本作の設定においてこの推論は成立しません。 なぜなら、本作には「透明な敵(透魔兵)」や「空間ワープの魔法」が日常的に存在しているからです。 身を潜めていた透魔兵がカムイを追って飛び降りた可能性や、ワープ魔法で急襲した可能性を否定する材料は一切示されていません。魔法や超常現象が何でもありのファンタジー世界において、現実世界の物理的な制約を前提とした「あの場には俺たちしかいなかった」という論理は、あまりに脆弱です。

もし本気で犯人を特定しようとするならば、飛び降りた順番を全員に聞き取り、証言の矛盾を洗うといった「聞き込み」の描写が必要でしたが、そうしたプロセスも皆無です。 結局、『金田一少年の事件簿』のような「犯人はこの中にいる!」というシチュエーションを再現したいという演出上の欲求が先行し、ファンタジーとしてのリアリティや推理の整合性が置き去りにされています。

FEにミステリー要素を取り入れる試みは挑戦的でしたが、世界観のルールを整理しないまま導入してしまった結果、プレイヤーには「理屈が破綻している」という違和感だけが残る形となってしまいました。

透魔編10章:カジュアルすぎるイザナの死、それに見合わない対価

神々の末裔とされるイズモ公国の公王イザナは、一際異彩を放つ極めて軽いノリのキャラクターとして登場します。

彼は一族に伝わる言い伝え「明るき道、昏き道、どちらも歩めぬ迷い人が訪れたとき、我が一族がもう1つの道を示す」に基づき、カムイこそがその「迷い人」であるとして、道を示すための儀式を執り行います。

しかし、その儀式の代償は自らの命というあまりに重いものでした。

衝撃的な展開ですが、当のイザナは最後までその軽妙なノリを崩さず、「じゃ、そういうことで…ばい…ばーい」という言葉を最後に、あっけなくこの世を去ってしまいます。

私はこの演出に二つの不自然さを感じました。

一つ目は、イザナが抱く「死への覚悟」と、実際の描写との決定的な乖離です。いくら「ノリが軽い」というキャラクター設定があるにせよ、自らの命に対する執着がこれほどまでに希薄である理由が、作中では一切描かれていません。一族の使命を守るためなら死をも厭わないという、強固な思想や死生観に至った背景説明(過去の経験や教育など)が欠落しているため、彼の最期は「高潔な自己犠牲」というよりも、むしろ「自らの命に対する異常な無頓着さ」として映ってしまいます。本来なら、その軽妙な振る舞いの裏に秘められた「公王としての重い責任感」が垣間見えるべきシーンですが、背景説明が皆無なせいで、単に「物語を進行させるための『神託』という機能を果たして退場した」という印象だけが残ります。

二つ目は、彼が命を賭してまで提示した情報の価値です。 彼が遺した「竜に会え」というメッセージの先にあるのは、七重の塔にいる「虹の賢者」ですが、これは白夜・暗夜の両ルートを遊んだプレイヤーからすれば既知の事実です。しかも、他のルートではイザナの犠牲などなくとも、カムイたちは力を求めて自然にその塔へと辿り着いていました。

透魔ルートにおいても、他ルート同様に自然と目的地へ辿り着けたのではないか――。わざわざ彼を死なせてまで得る情報の価値としては、あまりに釣り合いが取れていないように感じられます。命という究極の対価を支払ったにも関わらず、イザナの最期は「崇高な死」ではなく、ただの「無駄死に」であったかのような、やりきれない虚しさだけが残ります。ここでもまた、ドラマチックな犠牲シーンを作ること自体が目的化してしまい、キャラクターの尊厳が脚本の都合によって塗りつぶされてしまったようで、残念でなりませんでした。

透魔編16章:カムイの記憶喪失の理由が不明瞭

物語の根底を支える「カムイの過去」ですが、設定の不透明さが物語の説得力を弱め、受け手に余計な混乱を招く要因となっています。

カムイは幼少期、暗夜王ガロンによって養父スメラギを目の前で殺害され、拉致されました。しかし彼は、白夜王国で過ごした記憶を一切持たず、自らを「暗夜の正統な王族」だと信じて疑わずに育ちます。ここで大きな違和感として浮上するのが「なぜカムイに幼少期の記憶がないのか?」という点です。

リョウマの嫉妬が示唆する「カムイの年齢」

透魔編16章で、兄リョウマはかつてのカムイをこう話します。

「幼い頃から純粋で真っ直ぐで、その王の資質に嫉妬を覚えたことすらある」と。

意思疎通もままならない赤ん坊に対し、具体的な人間性を見出し、「王としての資質」に嫉妬まで抱くというのは不自然です。この発言を信じるならば、当時のカムイは少なくとも自分の足で歩き、自らの意思を言葉にし、周囲に才能を感じさせる程度の年齢――つまり、「人格形成の根幹を成すような強烈な原体験」があれば、それが記憶として定着して然るべき年齢であったと考えるのが妥当でしょう。

明確に語られない「記憶喪失」のメカニズム

しかし、それほど多感な時期に「父が目の前で惨殺され、敵国に拉致される」という凄惨なトラウマを経験しながら、なぜ彼はすべてを忘却できたのでしょうか。

5章では、竜化をきっかけに当時の惨劇を思い出したような回想シーンが挿入されます。

このことから、カムイの記憶は「極限状態での自己防衛」や、あるいは「何らかの魔術的な封印」によって隠蔽されていたと推察することは可能です。

問題は、これほど重要な「記憶喪失の理由」について、作中で明確な補足説明が一切なされないことです。

暗夜での旧友サイラスを忘れていたことについても、「印象の薄い友人だった」というあまりに苦しい釈明で片付けられていますが、国を揺るがす誘拐事件の記憶までもが、同様に「なんとなく」で処理されている印象を拭えません。

設定不足が招く「悲劇の形骸化」

本来、カムイの生い立ちは「失われた過去」と「偽りの現在」の間で揺れ動く、極めてドラマチックな葛藤の源泉であるはずです。しかし、記憶喪失が単に物語を都合よく進めるための方便として扱われ、その内面的なメカニズムや苦悩が掘り下げられないため、プレイヤーとしては彼の悲劇に心の底から同情することが難しくなっています。

「記憶に刻まれるはずの幼少期の強烈な原体験」が示されつつ、一方で「幼少期の記憶はすべて忘却している」という、一見構造的な矛盾を孕んだ設定には、やはり相応の裏付けとなる説明や描写が不可欠だったように思います。意図的に語らず余白を残した可能性もありますが、根拠が示されないままカムイの幼少期が語られたことで、私の中では整合性に対する疑問が生じ、結果として説明が不足している印象を受けました。

透魔編18章:推理パートのための「生贄」にされたクリムゾン

透魔編18章では、無限渓谷へと飛び込む直前、カムイとクリムゾンの間で印象的な会話が交わされます。クリムゾンは「一世一代の勝負の前には胸元に花を挿す」というシュヴァリエ公国の女騎士のしきたりを語り、自らの鎧に花を挿します。

しかし、冷静に考えれば、それ専用の鎧でもなければ激しい戦場に赴く鎧に花を固定する穴などあるはずもなく、そもそも激闘の中で花が散らずに残っていること自体、不自然と言わざるを得ません。挿した花が戦闘で散るというのはとても不穏なことなので、しきたりになる背景が見えてきません。何らかの「フラグ」であることは明白ですが、あまりに唐突で無理のある設定に、私はこの時点で強い違和感を覚えました。

続く落下シーンでの最期は、さらに混迷を極めます。

二人が無限渓谷を降下している最中、カムイは何者かから魔法攻撃を受けますが、それをクリムゾンが身を挺して守り、命を落とすのです。

自由落下という空中制御が効かない状態で、どうやってカムイをピンポイントで庇うことができたのか。そして、彼女が胸に挿していた花が無残に散っていく演出が、執拗なまでに強調されます。

後に、この「胸の花」という要素は、犯人特定の重要なヒント(その事実を知っていたのはカムイ、クリムゾン、そして犯人のみ)として機能します。制作側が「ミステリー要素」を物語に組み込むための伏線として花を強調したかった意図は理解できます。 しかし、その推理パートを成立させるために、不自然な風習を持ち出し、空中で庇うという物理的に想像しがたいシチュエーションでクリムゾンを死亡させた描写から「キャラクターが推理ギミックの犠牲になった」という印象を植え付けられてしまいました。

特にクリムゾンは、支援会話もあり、結婚までできます。プレイヤーが愛着を抱けるキャラクターです。白夜ルートのスズカゼのような救済ルートも用意されておらず、たとえ主人公と結ばれて子供がいたとしても、物語を進めれば強制的に死の運命を辿らされます。彼女を好きになったプレイヤーにとって、これほど不条理な落胆はありません。

せめて、その死に必然性と納得感のある演出があれば救いもありましたが、本作の描写はあまりにも「推理パートのための犠牲」に映ってしまいます。とってつけたような仲間の犠牲によって、命の重みが「クイズのヒント」へと貶められてしまったように感じ、非常に後味の悪いシーンでした。

透魔編21章:ノスフェラトゥがもともと人間という驚愕の事実に誰も驚かない

透魔編21章では、ハイドラの尖兵である少年ロンタオがカムイを孤立させ、その正体を現します。

しかし、カムイの機転(置き手紙)によって仲間たちが駆けつけると、追い詰められたロンタオはハイドラに許しを請い、突如として怪物「ノスフェラトゥ」へと姿を変えられてしまいます。

アクアの解説によれば、これこそが透魔の呪いであり、ロンタオもまた「任務に失敗すれば仲間と同じ末路を辿る」という恐怖に支配されていたことが示唆されます。

このシーンが提示する事実は、本来、極めてショッキングなはずです。 なぜなら、ノスフェラトゥといえば暗夜王ガロンが生み出した「兵器」であり、白夜王国だけでなく暗夜王国の住人すら脅かし、何より外伝ではモズメの故郷を襲って村人を皆殺しにした凄惨な怪物だからです。

その正体が「透魔の呪いで無理やり変貌させられた人間」であったということは、カムイがこれまで「怪物」として容赦なく斬り捨ててきた個体の一つひとつに、かつては普通の人生があったことを意味します。モズメの村を襲った個体すら、もしかしたら彼女の同郷の村人だったのかもしれない……。そうした残酷な想像を禁じ得ない、物語の前提を揺るがす重大な転換点です。

しかし、この戦慄すべき事実を突きつけられながら、劇中の登場人物は誰一人として驚きを見せず、その倫理的重みに触れることもありません。 「かつては人間だった者を殺していた」という事実にカムイが苦悩することも、モズメが「あの時村を襲った怪物は、元々人間だったのではないか」と青ざめ、言葉を失うような描写もありません。

本来あるべきはずの葛藤や衝撃が完全に欠落しており、ただ淡々と物語が進行していく。このキャラクターたちの無機質な反応を目の当たりにすると、どれほど凄惨な設定が明かされても「ただのテキスト上の情報」にしか感じられず、興醒めしてしまいます。

透魔編26編:急所を貫いたのに回復魔法ですぐ復活してしまうギュンター

透魔編26章では、ハイドラに洗脳されていたギュンターの裏切りと、彼がクリムゾン殺害の犯人であったことが発覚します。敗北後、アクアの歌によって正気を取り戻したギュンターは、騎士としての矜持から自らの腹を剣で貫き、命を持って罪を償おうとします。

このシーンを見て、私は暗夜編でカムイを生かすために自決したリョウマの姿を思い出しました。

「どのルートを辿っても、終盤で失われてしまう命がある」
「選択によっても変えられない過酷な運命がある」

リョウマの死がこの場面に繋がっているような、ルートを越えた強いメッセージ性を感じ、これまでの類似性がハイドラ打倒の過程で真実として明かされるのではないかと、期待に胸が膨らみました。

しかし、その高揚感は直後の演出によって無惨に打ち砕かれます。

倒れたギュンターに対し、サクラとエリーゼが回復魔法を施すと、彼はあろうことか「完全復活」を遂げてしまうのです。

「目が覚めたかい?」じゃないわ!(私の心のツッコミ)

この描写により、「人間の急所である腹を太い剣で貫かれても、回復魔法があれば短時間で元通りになる」ことが証明されてしまいました。では、これまでの犠牲は何だったのでしょうか。ガンズやノスフェラトゥの一撃に沈んだリリスはなぜ死ななければならなかったのか。覚悟の自決を遂げたリョウマも、とっさの盾となったエリーゼも、すぐに回復魔法をかければ何事もなかったかのように助かったのではないか。 生死を分かつはずの境界線がこれほどまでに曖昧では、過去の凄惨な犠牲すらも「単にヒーラーが仕事をしていなかっただけ」のように見えてしまい、命の重みが著しく損なわれてしまいます。

さらに、復活後のギュンターの振る舞いにも強い違和感を覚えました。 自決を図り、大量出血で生死の境を彷徨った直後であるにもかかわらず、彼は目を覚ますなり、かつてガロンに家族を皆殺しにされた過去や、暗夜への復讐のためにカムイを利用していた事実を淡々と語り始めるのです。

いくらヒーラーから回復魔法を施されたとはいえ、多くの血を失い、頭も朦朧としているでしょう。脳への負担が極限状態にあるはずの人間が、目覚めて即座に混濁もなく「状況説明」を始めるのは極めて不自然です。まずは自分が生きていることへの驚きや困惑、そしてカムイへの申し訳なさを口にするのが人間としての自然な反応でしょう。しかし、劇中のギュンターはまるで「溜まっていた設定を吐き出すためのロボット」のように、滞りなく告白をこなしていきます。

ここでもまた、キャラクターの血の通った感情よりも、「ここでこの設定を説明させなければならない」というシナリオ側の都合が優先されている。その作り手の透けて見える意図に、深い落胆を禁じ得ませんでした。

DLC「見えざる史実」:あまりに遅すぎた物語のネタバラシ

白夜・暗夜の両ルートで悲劇的な最期を遂げたリリスですが、完結編であるはずの「透魔ルート」では物語に絡んできません。両ルートでの彼女の死が何らかの伏線になっていると期待していた私にとって、この扱いは拍子抜け以外の何物でもありませんでした。

しかし、その真相は意外な場所――DLC「見えざる史実」でようやく語られることになります。

霧が晴れるように明かされる『if』の真実

このDLCでは、本編で放置されていた数々の疑問に対する「答え」が一気に提示されます。

なぜ『覚醒』のウード、アズール、セレナは『if』の世界にいたのか。彼らに下された真の使命とは何だったのか。リリスの正体は何者で、なぜ命を賭してまでカムイを護り抜いたのか。

『FEH(ファイアーエムブレム ヒーローズ)』で見かけた「闇リリス」の姿、そして彼女とハイドラの関係。それらが繋がった瞬間、私はようやく物語の全容を把握することができました。そして同時に、「『if』という物語の骨格自体は、決して悪くなかったのではないか?」という、奇妙な納得感を抱いたのです。

……ですが、あまりにも遅すぎました。

4割の脱落者が物語の真実を知らないという悲劇

ここで、興味深いデータがあります。私がSNS(X)で「『if』を何ルートクリアしたか」というアンケートをとったところ、以下のような結果となりました。

注目すべきは、4割近いプレイヤーが3ルート全てを遊ぶ前に脱落しているという事実です。本編の完結編ですらこの状況なのですから、その先のDLCまで辿り着き、物語の「真の骨格」に触れた人は更に限られるでしょう。

本来、こうした背景設定は本編の適切なタイミングで開示され、プレイヤーの「もっと先を知りたい」という好奇心を刺激する燃料になるべきものです。しかし本作は、核心部分を「別売りの、更にその先のDLC」まで隠匿し続けてしまいました。

次へ進みたくなるような巧みなシナリオであれば、この設計も「隠された真実」としてのカタルシスを生んだかもしれません。しかし本作では、本編の描写不足によるストレスが、プレイヤーを「真実に辿り着く前」に疲れさせてしまいました。

物語の裏にある真相を体験せずに終わってしまうプレイヤーがこれほど多い。この「ネタバラシを遅らせる構造そのものが、作品の評価を自ら削ってしまっている」という事実は、本作の抱える大きな問題のひとつと言えるでしょう。

DLC『泡沫の記憶』については、第一回の記事で触れているのでこの記事では割愛させていただきます。

統括

『ファイアーエムブレム if』という作品の物語を振り返ってみると、そこには「傑作になり得たはずの輝かしい断片」が至る所に散らばっています。

暗夜と白夜という鮮烈な対比構造、樹林伸氏によるミステリー要素を孕んだ脚本原案、マイキャッスルでの仲間との交流、ずっと聴いていたくなるような素晴らしい音楽、魅力的なキャラクターデザイン、面白いマップギミックやバトルシステム。

これら魅力的な素材は、本来ならシリーズ屈指の重厚な人間ドラマを描いたSRPGを紡ぎ出すはずでした。しかし、実際にプレイして残ったのは、感動よりも先に「なぜそうなった」と突っ込まざるを得ない、冷めた感情でした。

脚本の都合に振り回されたキャラクターたち

本作の最大の問題は、「物語を動かすための理屈」が「キャラクターの生きた意志」を追い越してしまったことにあります。 本来なら死ぬはずのない状況で、無理やり「悲劇の犠牲者」を演じさせられたリリスやスズカゼ、クリムゾン。説明不足や不自然な状況で犠牲となるフローラやエリーゼ。キャラクターたちは人間としてそこに存在するのではなく、シナリオライターが用意した「感動のチェックポイント」を通過させるための舞台装置として扱われてしまいました。その結果、彼らが命を落とすたびに、プレイヤーは悲しむ暇もなく、演出の不自然さに興醒めするという悪循環に陥っています。

「未完成」を感じさせる演出の綻び

1分35秒にわたる一枚絵の放置や、複製を感じさせる酷似した描写や前後で整合性が失われた描写、物理現象を完全に無視した不自然なアニメーション、支援会話の有無によって犯人が分かってしまうというシステム側の不備。これらは単なる制作上のミスではなく、作品を一つの「世界」として成立させるためのブラッシュアップの決定的な欠如を物語っています。 どんなに優れた脚本原案があっても、それをゲームというインタラクティブな体験に落とし込み、矛盾を削ぎ落とす工程がなければ、没入感は容易に崩壊します。本作は、その最も手間のかかる「磨き上げ」の時間が、制作スケジュールの波に飲み込まれてしまったのではないでしょうか。

最後に

『if』のストーリーは部分的に見れば良いところもありました。しかし、あまりにも多くの「矛盾」と「説明不足」が放置された結果、私は物語を読み解くことよりも、演出の粗を修正しながら脳内で補完することに疲弊してしまいました。

「本当はもっと素晴らしい物語になれたはずだ」 そう信じられるだけの魅力的な素材が揃っていたからこそ、その一つひとつが雑に扱われる光景を目の当たりにするのは、耐えがたい苦痛でもありました。

もし、すべての演出に説得力があり、キャラクターがその世界で「生きて」いたなら。 カムイの絶叫もお笑いの鉄板などではなく、プレイヤーの心を震わせる真の悲鳴となっていたでしょう。その失われた可能性こそが、私が本作をプレイして抱いた、最大にして唯一の「落胆」の正体です。

いつの日か、制作陣が本当に描きたかった『if』の物語が、リメイクとして新たに息を吹き返すことを願っています。


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