本記事は「なぜ私は『FE if』のシナリオに没入できなかったのか①世界設定の矛盾と説明不足」(『ファイアーエムブレム if』初見プレイ感想)の続きです。
今回は暗夜編のシナリオに焦点を当てます。
暗夜編は、高難易度 SRPG としての戦略性やマップの完成度は高く評価されています。しかしその一方で、シナリオ面においては「主人公の言動の支離滅裂さ」や「物語の不自然さ」が限界まで達しており、没入感のなさを通り越して、もはや強い拒絶感を覚えるほどでした。
なぜ一人のプレイヤーが、これほどまでに暗夜の物語を受け入れられなかったのか。その決定的な要因となったシーンの問題点を、時系列に沿って言語化していきます。
内容はほぼ全編にわたって批判的なものとなります。本作のシナリオを好意的に捉えている方には不快な表現が含まれる可能性があるため、あらかじめご承知おきください。
また、私は全ルート1周しただけなので理解が甘い点があるかもしれませんがご容赦ください。
- 暗夜編9章:理解に苦しむアクアや白夜王国の状況
- 暗夜編11章:ツッコミが追い付かない虹の賢者のくだり
- 暗夜編15章:なぜギュンターにそれを教えてやらなかった…
- 暗夜編20章:それは説得じゃなくて脅迫っていうんやで…
- 暗夜編21章:あまりにも唐突で後味の悪いリリスの死
- 暗夜編24章:敵軍が攻めてきたのに危機感のない白夜の民
- 暗夜編27章:都合よく王座に座るガロン、それをなぜか確信しているカムイ
- 暗夜編27章:闘うことを強要するカムイたち、なぜか冷静に拒む暗夜王族たち
- 暗夜編27章:眷属タクミに舐めプして一撃で落ちるカムイ
- 最終決戦の演出が素晴らしかったのが救い
暗夜編9章:理解に苦しむアクアや白夜王国の状況
捕えられているのになぜか野放し状態のアクア
暗夜編9章では、カムイの白夜王国裏切りを受け、暗夜王国に関わりのあったアクアが白夜兵に捕えられ、白夜軍に占拠された黒竜砦に連行されています。

ここでまず疑問を抱くのは、アクアの置かれた状況です。彼女は捕えられた身でありながら、なぜか牢に幽閉されているわけでもなく、砦内を自由に歩き回っています。一見するとある程度の自由を許されているようにも見えますが、砦内の白夜兵に見つかれば容赦なく殺されるという、極めて矛盾した状態にあります。
本来であれば、拘束を自力で脱したのか、あるいは同地にいたニュクスが解放に手を貸したのかといった、何らかの補足描写が必要なはずです。そうした説明が一切ないため、物語の進行に合わせてキャラクターが不自然に配置されている印象を拭えません。
内乱が起こってるとしか思えない白夜王国の状況
さらに、白夜王国の統治体制についても強い違和感を覚えます。
ミコト亡き後、実質的なトップであるはずのリョウマをはじめとする王族たちがアクアを庇ったにもかかわらず、なぜ彼女は白夜兵に捕らえられてしまったのでしょうか。

そもそもアクア自身も白夜王族の一人です。王族の意志に背いて別の王族を拘束するという行為は、軍紀を乱すどころか国家に対する重大な反逆罪に相当するはずです。
アクアの発言によれば、敵国にゆかりのある者を排除する動きが始まったとのことですが、王族の意志を無視してこの暴挙を先導したのは一体誰だったのでしょう。もし兵士たちが王族を軽視し、公然と反旗を翻しているのであれば、それはもはや内乱状態と言えます。
しかし、劇中ではそうした政治的混乱への説明も皆無です。このように、目の前で起きている事象に対する根拠や背景が提示されないまま話が進んでしまうため、どうしても「都合よく作られた、とってつけたようなシナリオ」に感じてしまいます。
暗夜編11章:ツッコミが追い付かない虹の賢者のくだり
白夜王国軍の行動への理解が追い付かない
暗夜編11章のノートルディア公国への行軍における白夜軍の動向には、軍事的な合理性も物語的な必然性も欠如しており、強い違和感を覚えざるを得ません。
まず、このときカムイが与えられていた任務を振り返ります。第一の目的は「白夜軍が蔓延るノートルディアの制圧と支配」です。9章でガロンは「白夜軍が暗夜に仇為す策を講じている。悪い芽を早く摘んでおきたい」とその意図を語っています。一方、虹の賢者については、マークスから「力を授かれるかもしれない有益な情報」として、いわばついでの副産物として語られるに留まっています。

そして、カムイたちが目的地であるノートルディアに到着すると、戦うはずだった白夜軍は町から姿を消しています。町人の話によれば、白夜軍は虹の賢者を警護するため、数々の猛者が命を落としたという険峻なノートルディア山の「七重の塔」へ虹の賢者を無理やり連れて行ったというのです。



ここで、いくつもの「なぜ?」が浮かび上がります。
なぜ白夜軍は賢者を警護するのか: この時点の暗夜軍に賢者を襲撃する動機は示されていません。にもかかわらず、白夜軍はなぜか暗夜軍から賢者を守ることを最優先に動いています。
なぜ白夜軍はあえて死地を選んだのか:噂になるほど危険な「七重の塔」へ、なぜ自軍を消耗させるリスクを冒してまで賢者を連れ込んだのでしょうか。
なぜ白夜軍は塔を易々と占拠できているのか:「帰ってきた者はほとんどいない」と言われる難攻不落の設定に対し、白夜軍は何の損害も受けていない様子で、戦闘準備万全の状態で待ち構えています。設定と実情があまりにも乖離しています。

こうした不自然な展開に対し、プレイヤー側で以下のような「好意的な補完」を試みることは不可能ではありません。
- 実は白夜軍は、暗夜軍が賢者と接触して強くなる可能性を予見し、先手を打った
- 実はガロンの真の目的は賢者の殺害であり、白夜軍はそれを見抜き、先手を打った
- 実はガロンが言及した「白夜の策」には賢者の協力が必要だったため、白夜軍は賢者を死守する必要があった
- 実は噂された七重の塔の脅威は「賢者が生み出した幻影兵(白夜編で判明)」であるため、賢者が白夜軍に協力したことで無力化されていた
もしも連れ去られた虹の賢者がノートルディアでの戦火を避けるため、もしくは「夜刀神に選ばれたカムイ」に試練を与えるために敢えて白夜軍に協力した…といった想像を膨らませれば、幾分かの整合性は取れるかもしれません。
しかし、これらはすべて作中で一切語られない「プレイヤーの想像」に過ぎません。 プレイヤーがここまで必死に背景を捏造しなければ、目の前のキャラクターたちの行動原理が理解できない。それは物語として明らかに「説明不足」です。単に「ヒノカたちと七重の塔というマップで戦わせ、カムイを虹の賢者に会わせる」というゲーム進行上の都合を優先し、脚本としての整合性が放棄されているように感じられてしまいます。
虹の賢者は力を授けることに何も貢献していない
カムイたちが白夜軍を制圧し、ようやく七重の塔の頂上へ到達すると、そこには虹の賢者の姿がありました。「僕たちにも力を授けていただけないでしょうか」と乞うカムイに対し、賢者が放ったのは驚きの回答でした。
「力ならすでに、試練を乗り越えたお前さんたちのものになっておるよ。あの塔を破る前と比べて、体が軽くなっておるのを感じんか?よいか?わしに合って得られる力というのはな、わしに会うまでの試練の中で自ら身につける力のことなのじゃ。」
暗夜編11章クリア後の虹の賢者の台詞より
…これには思わず、力が抜けてしまいました。
改めて振り返ってみましょう。カムイたちが七重の塔で戦った相手は、賢者の生み出した幻影兵ではなく、先に塔を占拠していた「ヒノカ率いる白夜王国軍」でした。しかも、カムイたちが一人も殺さずに制圧できる程の明らかな実力差がある相手でした。
これが、かつて世界で4人しか達成者がいないという過酷な試練の内容なのでしょうか。「体が軽くなったじゃろ?」という賢者の言葉も、具体的な強化を実感できないプレイヤーからすれば、もはや「気のせい」や「気の持ちよう」のレベルに聞こえてしまいます。この後、夜刀神が賢者によって強化されますが、それは炎の紋章に近づくための儀によるものであり、賢者の試練による強化とは切り離された話です。
そもそも「先にいた白夜軍を倒すこと」がカムイたちの試練だったのだとすれば、それはもはや塔の試練ではなく単なる遭遇戦です。塔自体に何か特殊な仕掛けがあった訳でもありません。「強者を倒せば力が手に入る」という理屈なら、そもそも塔や賢者すら不要ということになってしまいます。
カムイたちが七重の塔で戦う羽目になったのも、白夜軍が賢者を連れ出したことで偶発的に発生したものであり、虹の賢者は自ら試練を課すことはせず、ただ頂上で待っていただけです。そのような状況で「それが試練だったのだ」と言われても、賢者が後付けで適当な理屈を乗せているようにしか見えません。
「実はすべて賢者の思惑通りで、白夜軍を誘導したのも彼だった」といった脳内補完をすれば、いくらかは納得できる部分はあるかもしれませんが、それでもすべての理屈を説明できません。
さらに混乱を招くのが、その後のガロンからの「虹の賢者殺害命令」です。 先ほど言及した通り、暗夜編では賢者はただ白夜軍に連れ出されて塔の頂上にいただけの「受動的な存在」として描写されています。それなのにガロンが「賢者を消せば後続の強化を阻止できる」と断じるのは、理屈として噛み合いません。
白夜編を遊べば、虹の賢者が幻影兵を生み出し、塔を登る者に能動的に試練を与えている様子が描かれるため、ガロンの命令も理解はできます。しかし、それは暗夜編単体では成立しない「他ルート前提の脚本」です。暗夜編から遊び始めた私は、あまりに説明のつかない状況を前に、もう考えるのを放棄するしかありませんでした。
脚本が本来担うべき説明を、なぜプレイヤーが多大な手間を払ってまで補完し続けなければならないのか。こうした「雑な繋ぎ」をプレイヤーの想像力に委ねてしまう脚本には、ストレスを通り越して、ストーリーを読み解く意欲そのものが削がれてしまうような感覚を覚えました。
初対面の虹の賢者の死に泣きわめくカムイ
前項目で書いた通り、カムイは虹の賢者殺害を命じられる訳ですが、当の賢者はすでに長すぎる時を生きてきたこと、これ以上生きれば人々に災いをもたらす存在になること、そして最初から力を授けた後に命を終えるつもりであったことを語り、安らかな表情のまま息を引き取ります。
過去作の知識があれば、彼が竜族であることは明らかです。竜族としての寿命と宿命を受け入れ、破滅を招く存在になる前に人に未来を託し、自ら幕を引くという、高潔な引き際を描こうとする制作側の意図がここにあったことは理解できます。過去作を遊んだプレイヤーをはっとさせる情報の開示具合もとても良かったと思います。
しかし、その直後のカムイの反応には、強い違和感を禁じ得ませんでした。
カムイは賢者の亡骸を前に「どうしてだ、賢者様…!!嫌だ…死なないで…目を覚ましてください!賢者様あああああーーーーーっ!!!!」と激しく取り乱します。

ボイス演出も相まって、明確に泣き叫んでいることが伝わる描写です。
ですが、虹の賢者とはこの場で初めて出会ったばかりです。長年行動を共にしてきた仲間でも、深い交流を重ねた師でもありません。それにもかかわらず、まるで肉親や親友を失ったかのような激しい悲嘆を見せられ、私にはその感情の根拠が全く見えてきませんでした。
この涙は、いったい何に対するものなのか。
その後の台詞で「不要な殺戮を避けて、多くの人の命を救いたかった。それなのにこんなことになってしまって」と吐露しているため、命を救えない己の無力さを嘆いているようではあります。

しかし、虹の賢者は殺戮によって命を落としたわけではありません。本人の意思による穏やかな最期だったはずです。
このように、カムイの激しい感情の変化が言葉や描写によって補強されないまま突き進むため、私は置いてけぼりにされてしまいました。5章でミコトが命を落とした時の反応もそうですが、こうした場面が積み重なることで「相手との関係性に関わらず、人が死ぬたびに全く同じ最大級のリアクションを取る主人公」という印象が強くなっていきます。その結果、本来悲劇として描かれるべき場面が、重みを持って響かなくなってしまいます。
戦記物において、人の死が持つ重みや情緒的な意味が失われてしまうのは、非常に致命的な問題であるように思います。
暗夜編15章:なぜギュンターにそれを教えてやらなかった…
暗夜編15章で透魔王国を訪れたカムイは、思わぬ形でギュンターと再会します。 3章で無限渓谷へと突き落とされた彼は、幸運にも崖下に叩きつけられることなく、この透魔王国へと迷い込んでいました。そこで化け物に襲われていたところをアクアに救われ、彼女が教えた安全な場所に身を潜めて生き延びていたというのです。

しかし、ここでひとつの疑問が浮かびあがります。無限渓谷の転落から再会までにはかなりの月日が経過していますが、見知らぬ土地、しかも異形の化け物が徘徊する危険な環境で、手負いのギュンターは一体どのように食料を調達し、生き延びることができたのでしょうか。
さらに、15章クリア後の展開が、その違和感に追い打ちをかけます。カムイとギュンターをとある崖へと案内したアクアは、事も無げにこう告げるのです。
「ここから飛び降りれば、元の世界に戻れるわ」
この瞬間、私の心の中では「なぜそれを最初にギュンターに会った時に教えてあげなかったんだ!」という猛烈なツッコミが止まりませんでした。戻る手段が最初から分かっていたのであれば、ギュンターは再会を待たずとも、すぐに帰還できたはずです。彼がわざわざ長い月日をかけて、死と隣り合わせの透魔王国に留まり続ける必要は微塵もありませんでした。
このアクアの「放置」がいかに残酷であったかは、元の世界に戻った直後の彼女自身の説明によって、よりいっそう際立つことになります。
無事に地上へ戻った際、ギュンターの到着がカムイたちから少し遅れるのですが、アクアはその理由を「透魔王国は時空がずれているから」と説明します。

この「ずれ」の定義は曖昧ですが、もし「透魔王国の数秒が現実世界の数分に相当する」といった時間の加速が起きているのだとすれば、事態は深刻です。その理屈では、ギュンターが異界で過ごした主観時間は、カムイたちが地上で体感した数ヶ月よりもさらに絶望的な長期間(下手をすれば数年単位)に及んでいた可能性すら浮上するからです。
アクアは劇中で「自分が白夜王国で捕まったために再会が遅れてしまった」と謝罪しています。彼女としては、すぐにギュンターを元の世界へ導くために戻るつもりだったのかもしれません。しかし、それならばなおさら「救出したその場で、なぜ戻り方を教えなかったのか」という疑問が解消されません。もし最初に教えられていれば、彼はアクアの助けを待つまでもなく、即座に自力で帰還できたはずなのです。
結局、こうした矛盾へのフォローが一切ないため、物語の都合でギュンターを戦線から離脱させ、必要なタイミングで再登場させるために「不当に放置した」という印象が拭えません。
本作のシナリオは、こうした自然と沸いてくる疑問に対して、腑に落ちる答えが用意されていないケースがあまりに多すぎます。キャラクターが生きている世界のルールや感情の整合性よりも、プロットの進行が優先される作劇の雑さこそが、物語への没入を削ぐ決定的な要因となっているのだと感じます。
暗夜編20章:それは説得じゃなくて脅迫っていうんやで…
暗夜編20章では、風の部族の村を通る許可を得ようとしたエリーゼやカミラが、村人から拒絶されてしまいます。かつて暗夜王国が差し向けたノスフェラトゥによって甚大な被害を受けたこの村には、今も暗夜への強い嫌悪感が根付いているためです。そこでカムイは、過去の過ちを謝罪し、信用を勝ち取るために話し合いに向かいます。

そこに族長フウガが姿を現すのですが、謝罪と説得に向かおうとしたカムイの片手には、なぜか剥き出しの「夜刀神」が握られていました。

このシュールすぎる光景に、思わず私は絶句しました。
「おいおいカムイ、それは説得やない。脅迫っていうんや……」と。
この場面が、後に族長フウガから夜刀神について尋ねられる展開上、刀を見せる必要があったことは理解できます。しかし、それならば尋ねられたタイミングで初めて抜刀すべきです。剥き出しの刀を片手に謝罪に向かうのは、平和的解決を望む者の振る舞いではありません。そもそも夜刀神の鞘がない可能性もありますが、それはそれで「いつも刀身剥き出しで夜刀神を持ち歩いてるの?」と突っ込みたくなります。
おそらく制作側の事情としては、「抜刀モーションを作るコストを惜しんだ」あるいは「夜刀神を強調したかった」といったメタ的な理由なのでしょう。しかし、それにより、カムイの「世間知らず」という設定も相まって「本気で武装したまま相手を説得できると思っているおバカな主人公」に見えてしまっています。
こういった細部のリアリティを欠いた安易な描写は、シーン全体に拭い難い違和感や本来の意図ではない滑稽さを与えてしまっていると感じました。
暗夜編21章:あまりにも唐突で後味の悪いリリスの死
私が本作において決定的に困惑し、強い拒絶感を覚えたのが、暗夜編21章におけるリリスの死亡シーンです。はっきり言ってしまえば、私はこの一連の展開に心底「ドン引き」しました。
まず、21章クリア後の状況を整理します。ノスフェラトゥの群れに囲まれた窮地で、アクアとマークスはカムイにこう説きます。
「お前はこの軍の大将であり、世界を救うためにここで死ぬわけにはいかない。仲間が囮になる間に先へ行け」と。
ここまでは、戦記物として王道の「主人公を生かすための献身」という熱い構図です。

しかし、直後のシーンで私の思考は停止しました。 あれほど「絶対に死ぬな」と念を押されたはずのカムイが、なぜか一人の護衛も付けずに単独で危険な戦地の前線を駆け抜けていたのです。

まさか他の仲間全員が囮になっているとは思えませんし、「おいおい、マークスたちの話を聞いていたのか?」と私は突っ込まずにはいられませんでした。最も無防備な状態で、最も危険な行動を自ら選んで突き進む姿は、まるで「襲ってください」と言わんばかりの壮大なフリを見せられているかのようです。
案の定、立ち止まったカムイの背後からノスフェラトゥが襲いかかります。

その瞬間、どこからともなく現れたリリスが攻撃を身代わりに受け、命を落とします。

何の予兆も説明もなく、なぜリリスがそこにいたのか、なぜ身を挺してかばったのか。そうした理由は一切描かれません。ただ「ここで誰かを死なせて悲劇を演出したい」という脚本側の意図だけが透けて見える、あまりに唐突な死でした。
(一応 DLC でリリスが唐突に現れた理由は描かれているものの…)
さらに、追い打ちをかけたのがカムイの嘆きです。

「せっかくここまで来たのに! あと少しで戦争が終わるのに! なのにどうしてここで君を失わないといけないんだ……!」
この台詞を聞いた瞬間、私の心は完全に冷め切ってしまいました。客観的に見れば、リリスの死は「カムイが仲間からの忠告を無視して軽率な行動を取った結果、その尻拭いをリリスがさせられた」という構図に見えます。にもかかわらず、カムイは自分の軽率さが招いた結果であることに一切気づいていない様子なのです。
この一連の流れは、悲劇などではなく、もはや悪趣味なブラックジョークにしか映りませんでした。 何より悲しいのは、マイキャッスルで日々交流を重ね、愛着を抱いていたリリスというキャラクターが、整合性を欠いた脚本を成立させるための「使い捨ての盾」として処理されてしまったことです。
21章までのリリスへの愛着の積み重ねを一瞬で破壊するようなこの場面で、私は強い「感情の断絶」を感じました。「もうこれ以上、この物語を真剣に追うべきではないのかもしれない」――そう絶望するほど、作り手とプレイヤーである私との間に決定的な温度差が生じてしまったシーンでした。
暗夜編24章:敵軍が攻めてきたのに危機感のない白夜の民
暗夜編24章では、ガロン率いる暗夜王国軍が白夜王都へと行軍する場面が描かれます。ここでの王都の民たちの描写には強い違和感を感じずにはいられませんでした。
侵攻してきた暗夜軍を目の当たりにした王都の民は、逃げることも隠れることもせず、群衆の中にいるカムイを見つけるなり、次々と罵声を浴びせます。
「裏切り者のカムイ王子がいるぞ!」「ミコト様や王都をあんな風にして、よくその顔を見せられたのう!」
「主人を返しておくれ!この人でなし!」

この状況に対し、私は強い困惑を禁じ得ませんでした。
「目の前に、殺戮を繰り返してきた敵国の軍勢が、今まさに戦争目的で攻め込んできている」という極限状況において、この反応はあまりに現実離れしています。武装もせず、避難もせず、まるで安全圏からヤジを飛ばすかのように振る舞う民衆。彼らには「見つかれば殺される」という最低限の危機感が欠落しています。結果として、このシーンは切迫した戦場ではなく、カムイを精神的に追い詰めるためだけに雑に用意された作為的な描写にしか見えません。
案の定、罵声を浴びせた民たちは、マクベスとガンズによって即座に惨殺されてしまいます。

ここで一つ、暗夜軍側が「戦後の統治を見据えて、当初は民間人を殺すつもりがなかった」という可能性は考えられます。マクベスとマークスとの会話でマクベスが「要人を一掃すれば乗っ取りも容易い」と語っているように、民を統治対象として生かす意図はあったのかもしれません。
マクベス「いいですか?これは白夜王国の邪魔者たちを、一掃するチャンスですぞ。投降の呼びかけなど生ぬるい…この戦乱に乗じ、白夜の要人を全て殺害してしまえば、晴れて戦争が終わった後…我が暗夜王国がこの国を乗っ取ることも容易くなるでしょう。」
暗夜編24章マクベスとマークスの会話より
しかし、その前提に立ったとしても、「民衆側の心理」が説明できないという問題は残ります。 暗夜軍の腹の内など知るよしもない一般市民が、これまで殺戮を繰り返してきた暗夜兵を目の前にして、なぜ身を守るより先に「カムイへの罵声」を選べるのでしょうか。どれほど憎くとも、まずは逃げ、隠れるのが人間としての本能です。
さらに言えば、王都に到達するまでに防衛拠点でサクラやタクミたちが敗北しているにもかかわらず、白夜王国が王都の民に避難や防衛の指示をまともに出した形跡がない点も不可解です。

お兄さんの「あいつらだ…!」という発言が、事前に侵攻を聞いていたことを示唆しているのだとしても、それならば尚更悠長にヤジを飛ばしている場合ではありません。シュヴァリエ公国では無抵抗の一般市民も関係なくガンズらに虐殺されました。これまで蹂躙されてきた各地の惨状を耳にしていれば、見つかっただけで殺される恐怖に震え、一刻も早く避難するのが自然な反応です。
結局のところ、白夜王国の民は、戦争という極限状態に生きる人間としてではなく、「カムイを責めるための記号」としてのみ配置されており、生きた人間としての実在感を失っています。この不自然さは、戦争という重い題材を扱いながら、その本質的な緊張感を等身大の人間描写に落とし込めていない「作劇の甘さ」を象徴しているように感じます。暗夜編27章:都合よく王座に座るガロン、それをなぜか確信しているカムイ
暗夜編27章、王の間の扉の前に立ったカムイは、暗夜王族たちに向かって「この扉の先にあるものをその目で見てほしい。これがガロン王の真実だ」と語ります。そして、まるでガロンがそこに座っていることを確信しているかのように、迷いなく扉を開きます。


そして扉を開けると、ガロンはあっさりと王座に座っており、化け物の姿へと変貌していました。

カムイは一体、何を根拠に「今、ガロンが王座に座っている」と断言できたのでしょうか。
直前の展開で、ガロンが王の間に入ったこと自体は言及されています。ガロンはハイドラ神に報告するために「わしがいいと言うまで誰一人、王の間には足を踏み入れるでない」とカムイに言います。

その後、カムイたちはマクベスと戦闘になり、マクベスを倒した後、カムイたちは王の間の扉を開ける流れになっています。
ガロンから許可が下りるまで王の間に入るなと言われていた訳ですが、流れ的には許可が下りたから扉を開けた訳ではなさそうです。王座に座ってしまったガロンが王の間に入る許可を出す訳ないですから、カムイたちは許可なしで王の間の扉を開けたのでしょう。
もし、ここでガロンが王座に座っていなければ、無許可で王の間に入ってきたカムイたちは疑いの目を持たれてしまいます。王座に座らせる目的に気づかれてしまえば、暗夜王族たちにガロンの正体をつきつけることは叶わなくなります。カムイが直前で語った「多くの民を、リリスを、リョウマ兄さんを、そして自分の気持ちを犠牲にしてまで闘ってきた」これまでが、すべて水の泡になってしまいます。


カムイはガロンがハイドラ神への報告が終わっているとなぜ確信できたのでしょうか?仮にハイドラ神への報告が終わっていることが分かったとして、なぜ王座に座っていると確信できるのでしょうか?
まず、物語中では「ガロンが王座に座らなければならない理由」が一切提示されていません。白夜王国を我が物にしたいというガロンの欲求は語られているので、自己顕示欲を満たすために王座に座るという動機は考えられます。たったのそれだけです。これが「必ず王座に座っている」と断言できるほどの根拠になるでしょうか。
洗脳されているとはいえ、ガロンは決して愚かな王として描かれてきたわけではありません。むしろ、カムイやアクアが王座を使って真実を暴こうとしている思惑に気づいていても不思議ではない立場です。
透魔ルートを遊ぶとわかるのですが、この王座は透魔王から白夜王に贈られたものです。かつて各国の王族の間には交流がありました。



仮にハイドラがそれを全く知らなかったとしても、「真実を映す王座」は白夜王国には古くから伝わる伝承と説明がされています。そのくらいは、軍師であるマクベスが敵国の情報を調べる過程で把握してしかるべきではないでしょうか。もしこの王座の秘密が、白夜王族の極一部しか知らない「最高機密の情報」であったなら、その秘匿性の高さが物語中で示されるべきでした。しかし、そうした描写がないまま、ガロンはまるで罠にかかりに行くかのようにあっさりと王座に座り、正体を露呈させてしまいます。
物語の序盤でアクアから「ガロンを王座に座らせる」作戦を聞いたとき、私は「どうやってあの警戒心の強いガロンを王座に誘導するのだろうか」と、彼女らなりの「策」を期待していました。しかし、蓋を開けてみれば「策などなく、王の間に行ってみたら都合よく座っていた」という展開でした。
キャラクターたちが自身の知略で運命を切り拓くのではなく、物語のゴールから逆算された「あまりに都合の良い状況」に流されている。暗夜編の山場とも言えるこのシーンで、そうした設定の掘り下げ不足を目の当たりにし、「また今回もこうして強引に解決させてしまうのか」という、拭いようのない落胆を覚えたシーンでした。
暗夜編27章:闘うことを強要するカムイたち、なぜか冷静に拒む暗夜王族たち
違和感は、王の間の扉を開いた後の展開にも続きます。
化け物と化したガロンは暗夜王族たちに襲いかかり、カムイは夜刀神で対抗しますが、全く歯が立ちません。そこでカムイとアクアは、暗夜王族たちに共に戦うよう要請します。父の変わり果てた姿に泣き崩れるエリーゼに対しても、アクアは「エリーゼ、泣いていてはだめよ!闘うのよ、あなたも!」と容赦なく促します。


この場面の二人の振る舞いには、正直なところ「身勝手さ」を感じてしまいました。
ガロンの真実を見せるという当初の目的はすでに達成されています。頼みの綱である夜刀神すら通じない以上、まずは身を守るために一時撤退し、態勢を立て直すという選択肢もあったはずです。それにもかかわらず、ショックを受けて泣いているエリーゼに即座に「戦え」と強いる姿は、彼女らの身を案じているというよりも、自分たちの下したガロンを討つという判断を他者に押し付けているように見えてしまいました。
一方で、協力を求められたカミラやレオンたちの反応も、別の意味で不自然です。
カミラ「いくら真実を知ったって、簡単に割り切れるものじゃないもの」
レオン「あんな姿になっても、父上は父上だ。倒すことなんて、僕には……」

彼らはそう語りますが、その口調や表情は驚くほど冷静です。 目の前には、かつての父の面影すらない異形の怪物が現れ、自分たちに明確な殺意を向けてきているのです。エリーゼのように驚愕やパニックに陥るのが人間として自然な反応であるはずなのに、まるで他人事の是非を論じているかのような理性的な態度には、強い違和感を感じました。
最終的に、カムイが「みんな……!!お願いだ、闘ってくれ!」と懇願し、長兄マークスがようやく闘う意思を示したことで、夜刀神が強化され、決戦へと突入します。

この一連の流れを通して痛感したのは、キャラクターたちが自身の心で動いているのではなく、あらかじめ決められた「ストーリーの進行表」に従って不自然な言動を強いられているという点です。
「ここで姉弟に拒絶させ、マークスに決断させることで夜刀神が進化するドラマを作る」というプロットの都合が透けて見えすぎています。シリアスなはずの場面であればあるほど、こうした作為的な描写はプレイヤーの没入感を削ぎ、感情移入の余地を奪ってしまいます。
本来、ここは夜刀神の真の力がようやく解放される物語最大のハイライトの一つであるはずです。しかし、キャラクターたちの不自然な言動に全く共感できなかった私は、ただ淡々と「夜刀神が強化された」というゲーム上の性能アップを喜ぶくらいしかできませんでした。
暗夜編27章:眷属タクミに舐めプして一撃で落ちるカムイ
暗夜編のクライマックス、ガロンを打倒した直後に、ハイドラに洗脳されたタクミが姿を現します。

アクアは「彼もガロン王と同じように何者かに囚われている。もはや手遅れよ」と冷静に状況を分析し、「犠牲が増えてしまう前に止めるしかない」と告げます。至極まっとうな判断です。
しかし、カムイは「いや……待ってくれ」とそれを制し、まるで何か策があるかのように前に出ていきます。
そこでカムイが放った言葉は「タクミの怒りはもっともだ。僕は自分の選んだ道の責任を取らなければならない」という、正気を失った相手への情緒的な寄り添いでした。
あろうことかカムイは、「狙うのなら僕一人を。さあ……来い!!」とタクミを挑発し、自分に気が済むまで矢を放てとばかりに歩み寄ります。


この一連の流れには、強い落胆を禁じ得ませんでした。
アクアが指摘した通り、ハイドラに憑依された存在がガロンと同等の脅威であるならば、ここでタクミを討たなければ「両国の平和」という目的は達成されません。アクアの言う通り、カムイの嫌っている「犠牲」が更に増えるでしょう。ガロンと同じ危険性を持つタクミは必ず討たなければならないのです。にもかかわらず、カムイはまるで物語を一人で完結させようとするかのように、「すべての責任を背負う自分」に酔いしれ、結果として何も成し遂げられずに敗北します。
その姿は、状況や己の実力を正しく把握できていない、極めて見当違いな行動を取る人物に映ります。ガロンとの決戦前には、あれほど執拗に暗夜王族たちに「共に闘ってくれ」と共闘を訴えていたはずです。それなのに、なぜこの土壇場で急に「自分一人で受け止める」などと無謀なことを言い出すのか。言動の一貫性が完全に崩壊しています。
強化された夜刀神の力に慢心したのか、あるいは自己犠牲という安直なヒロイズムに酔ってしまったのか。いずれにせよ、ここでのカムイの言動は軽率の極みであり、アクアのまともさだけが唯一の救いという、見ていて忍びない有り様でした。
必死に活路を見出そうとするアクアの横で、突如として身勝手な振る舞いを始めたカムイ。その瞬間、アクアがどれほど青ざめた顔をしていたか、想像するに余りあります。カムイが気絶した後のマークスの「馬鹿な」というボイスが、皮肉にも「馬鹿か」という呆れ声に聞こえてしまうほどでした。
この場面がプレイヤーとして受け入れがたいのは、前後の描写で言動が噛み合っていないことはおろか、暗夜編を通して犠牲を払いながら積み上げてきた「両国が平和になる未来を切り開く」というカムイの行動原理が、タクミとの対峙において唐突に放棄されているように見える点です。最後の最後まで、キャラクターの意志ではなく、制作上の「演出の都合」によってカムイが愚かな行動を取らされているように見えてしまい、もはやカムイが不憫に思えてくるほどでした。
最終決戦の演出が素晴らしかったのが救い
ここまで多岐にわたって指摘してきた通り、暗夜編のシナリオは、商業作品として看過しがたいレベルの欠陥を抱えていると言わざるを得ません。国家間の対立という重厚なテーマを扱いながら、戦記物というジャンルへの理解や思索が及ばないまま、舞台裏の都合が透けて見える記号的なエピソードを継ぎ接ぎして、辛うじて一筋の物語に見せかけている。残念ながら、そう評さざるを得ない完成度でした。
しかし、そんな本作において唯一の救いといえるのが、終章バトル直前の演出です。
最終決戦が幕を開けるその瞬間、アクアが自らの命を削る覚悟で禁断の歌を口ずさみ、その歌声がそのままバトルBGM(『すべての路の果てに~地』)へとシームレスに繋がっていく。この一連の流れだけは、文句なしに素晴らしかったです。
思えば、カムイが物語の都合で不自然な言動を繰り返す中、アクアだけは「両国の戦いを終わらせる」という目的のために、比較的一貫してまともな言動を保っていました。彼女が最後まで自身の使命を全うしようとする一貫性があったからこそ、あの土壇場での献身的な演出が、単なる演出を超えた確かな説得力を持って響いたのだと感じます。
もしこれで、シナリオ自体も満足度の高い完成度であったなら、間違いなく鳥肌が立つほど感動していただろうと思います。そうした「最高の素材」がありながら、それを活かしきれなかった物語の拙さには、ただただ惜しいという気持ちが募ります。
「終わりよければ全てよし」とまでは到底いきませんが、支離滅裂な展開に翻弄され続けた暗夜編において、あの瞬間の高揚感だけが、一人のプレイヤーとして物語に没入できた唯一の救いでした。
さて、ここまで暗夜編のシナリオについて率直な思いを綴ってきましたが、次回は「白夜編」について触れたいと思います。あらかじめ断っておくと、白夜編は暗夜編同様にツッコミどころは多いものの、暗夜編に比べれば、物語としての納得感が遥かに高いシナリオでした。なぜそう感じたのか、暗夜編との対比を交えつつ言語化していこうと思います。









