FEHのガチャで沼って確率が上昇してしまった時、損した分を取り戻すために確率回収に走る人は結構多いのではないかと思います。しかし、確率回収は下手すると余計に沼る事もあります。この記事では確率回収という行為にどのくらい意味があるのかを調査、考察します。
確率回収とは?
FEHのガチャには★5が出ないと★5排出率が上昇する仕様があります。通常の新英雄ガチャ、超英雄ガチャなどは★5ピックアップ排出率3%から始まり、★5が5回出ないと0.25%ずつ(すり抜け★5率含めると0.5%ずつ)、この確率が上昇していきます。★5が出ると排出率上昇はリセットされます。この排出率上昇はガチャが終了すると消えて、次のガチャに引き継がれません。
- 3%だった排出率が気づくと4%に上がって予算が尽きた
- ガチャ期間終了すると上がった排出率リセットされて勿体ない
そんな状況になり、人々はガチャを★5が出るまで回す行為に走ります。この確率をリセットするまでオーブを消費する行為が確率回収と呼ばれる行為です。
調査方法
「すれ違いの夏」のガチャシミュレーターを使用して調査します。2020年6月のガチャで少し古いですが、このガチャで調査した特別な意味はないです。
確率上昇していない状態からと、3段階分の確率上昇時の状態から★5が1体出るまでにかかったオーブ数を1万回シミュレートして統計を取り、その結果を比較して調査します。
ガチャのシミュレートは全色引きで行います。
調査結果
確率上昇時に1体★5が出るまでにかかるオーブ数
以下は★5ピックアップ排出率3%、4%、5%、6%の時に★5が1体出るまでにかかるオーブ数の最小、最大、平均、標準偏差です。
PU排出率 | 最小 | 最大 | 平均 | 標準偏差 |
---|---|---|---|---|
3% | 5 | 337 | 58.0 | 37.4 |
4% | 5 | 293 | 45.8 | 30.0 |
5% | 5 | 293 | 38.1 | 25.0 |
6% | 5 | 229 | 32.8 | 21.4 |
以下のグラフは★5ピックアップ排出率3%、4%、5%、6%の時に★5が1体出るまでにかかるオーブ数の分布です。
★5ピックアップ排出率3%開始だと最小は5オーブ、最大は337オーブでした。
これらをアニメーションすると以下のような感じで変化することがわかります。
以下は、これらのグラフを6%、5%、4%、3%の順に重ねたものです。
以下は、3%、4%、5%、6%の順に重ねたものです。
確率回収時に最後の盤面に複数体★5が出る確率
確率回収は最後の盤面に2体以上★5が出ることを期待してしまうものです。全色引きだと、同じ盤面にどのくらい★5が複数体出やすくなっているのか確認しました。
同じ盤面に★5が2体以上出た割合
PU排出率 | 割合 |
---|---|
3% | 13.9% |
4% | 17.9% |
5% | 20.4% |
6% | 24.5% |
同じ盤面に★5が3体以上出た割合
PU排出率 |
割合 |
---|---|
3% |
1.2% |
4% |
1.7% |
5% |
2.3% |
6% |
3.3% |
同じ盤面に★5が4体以上出た割合
PU排出率 |
割合 |
---|---|
3% |
0.04% |
4% |
0.13% |
5% |
0.18% |
6% |
0.22% |
同じ盤面に★5が5体出た割合(精度の都合上これだけ100万回シミュレートしました)
PU排出率 |
割合 |
---|---|
3% |
0.0004% |
4% |
0.0015% |
5% |
0.0029% |
6% |
0.0063% |
考察
考察には私の主観が多く含まれているので、1プレイヤーの考えとして参考程度にとどめて下さい。また、私は統計学の専門でもないので、確率の捉え方について間違ったことを言っている可能性があります。
確率回収に意味はあるのか?
まず、この表に注目します。★5が1体出るまでに消費したオーブ数の最小、最大、平均、標準偏差です。
PU排出率 |
最小 |
最大 |
平均 |
標準偏差 |
---|---|---|---|---|
3% |
5 |
337 |
58.0 |
37.4 |
4% |
5 |
293 |
45.8 |
30.0 |
5% |
5 |
293 |
38.1 |
25.0 |
6% |
5 |
229 |
32.8 |
21.4 |
最小消費オーブ数はどれも5オーブです。言うまでもないですが、1回ガチャを引いて★5が出る確率は排出率通りの確率になります。3%開始だろうと6%開始だろうと、1発で★5が出る時は出ます。
最大消費オーブ数を見てみると、6%で229オーブでした。つまり、1万人に1人は6%から始めて★5が出るまでに229オーブかかったという事になります。3%の時は337オーブなので、これよりワーストケースはまろやかになっていますが、6%だろうと爆死する時は爆死するということが分かります。
次に平均ですが、平均消費オーブ数は当然ながら徐々に下がっています。3%だと平均58オーブかかっていたのが、6%だと平均32.8オーブまで減っています。言い換えると、6%から確率回収を始めても平均33オーブくらいは消えるという事です。標準偏差は平均からのばらつきの大きさを示しています。ばらつき具合も37から21.4に下がっており、★5が出やすくなっているのが分かります。
80%程度の人は大体以下のオーブ数で★5が出ています。
- 3%開始
- 5~96オーブくらい
- 4%開始
- 5~76オーブくらい
- 5%開始
- 5~64オーブくらい
- 6%開始
- 5~55オーブくらい
以下は3%開始と6%開始のグラフを重ねたものです。ピンク色の部分が重なっている領域になります。
ピンク色の部分は3%でも6%でも同じ結果になった人たちです。この面積が大きいほど、3%開始と6%開始で★5の出やすさに差が少ないということになります。重なっている面積を調べたところ約50%でした。上昇した確率の比率と同じですね。6%から確率回収を始めた時に、半数の人は3%から引いた人と結果が変わらなかったという事になります。
次に★5が同じ盤面に2体以上出る確率に注目します。
PU排出率 |
割合 |
---|---|
3% |
13.9% |
4% |
17.9% |
5% |
20.4% |
6% |
24.5% |
ピックアップ排出率3%と6%を比較すると、10%ほど複数体同時に★5が出る確率が上がっています。小さくはない数値ですが、ネガティブな見方をすると、6%まで確率上昇していても70%以上は複数体★5が同じ盤面に出ないという事にはなります。
まとめると、★5ピックアップ排出率6%の状態はざっくり以下のような状態です。
- 普通5~96オーブくらいかかるところを、5~55オーブくらいで★5引ける
- ただし、半数は結果が変わらない、運が悪いと200オーブを超えるオーブ数がかかる事もある
- ★5が同じ盤面に出る確率は13.9%→24.5%に上昇(1体しか出ない確率が86%→75%に減少)
これをどのくらいお得になっていると考えるか。果たして確率回収する価値があるお得な状態なのか?
確率上昇は損したくない精神につけこんだ罠?
確率上昇は精神に以下のような作用をもたらします。
- 今までどのくらい★5が出ていないのかが数値で分かり、損している事を実感しやすい
- 期限内に引かないと自分のオーブで上がった確率がリセットされるので、勿体ない気がする
- 確率上昇によって★5がかなり出やすくなっている気がする、2体以上出るんじゃないかと期待してしまう
しかし、実際は以下のような事実があります。
- 確率上昇で上がる確率では劇的に★5が出やすくなる訳ではない
- 同時に複数体の★5が出る確率も劇的に上がっている訳ではない
- 1回★5が出るまでの僅かな試行回数では確率は全く収束しない
- 運が良ければ1発で出るし、運が悪ければ200オーブでも出ない
- 運が良ければ確率リセットまで2体以上出るが、大体は1体しか出ない
- これは確率上昇していない状態でも同じことが言える
確率上昇というシステムは一見良心的なシステムに見えて、損したくない気持ちにつけこんで課金を煽るよう設計されているようにも思えます。例えるなら期間限定で必要以上にお得になっているように見せて消費者の購買意欲を掻き立て、余った在庫をそんなに欲しいと思っていない消費者に買わせるバーゲンセールに似ています。
特に無料チケットがたくさん配られて、そんなに魅力的でないガチャをたくさん回して確率上昇してしまうと確率回収に走りがちです。無料チケットはありがたい反面、確率回収を促してオーブを使わせるような意図が裏にあるような気がしてなりません。
みなさんは無料チケットで★5ピックアップ確率3.5%くらいに上がって、確率回収を始めて5%まで上昇してしまった経験ありませんか?
確率上昇も無料チケットもうまく活用すれば我々にとっても美味しいシステムではありますが、冷静な判断力を失って振り回されてしまうと、結果的に無駄にオーブを消費してしまう結果に繋がりかねません。
長期的に見たら確率回収した方が得じゃないの?
確率上昇をした状態から引くような試行を相当な試行回数繰り返した場合は、当然ですが統計的に★5数の期待値は高くなります。
ただし、誤差が安定するには相当な試行回数が必要です。誤差10%程度の確率に収束する試行回数は確率分母の400倍と言われています。★5確率が12%なら、確率分母は8.33なので、表記された確率に近い統計を得るにはその400倍である3333回(全色引きで13332オーブ分)の試行回数が必要です。
現実的にこれだけのオーブを確率回収に消費できるでしょうか?
仮にこれだけの確率回収を行えても、誤差10%程度あるので、運が悪いと確率上昇していない時から引いた場合と同じような結果を得る事もあります。
6%からの確率回収を何度も行っている人は、毎回6%で引くのをやめた人に比べて、長期的に見たら★5数を多く獲得できますが、現実的には誤差が収束する程の確率回収を行えないので、結局は運で簡単に覆ります。
個人的な見解
先ほども述べた通り、★5が1体出る程度の試行回数で確率は収束しないので、3%だろうと6%だろうと、運次第で1発で出る時は出るし、運が悪ければ200オーブ使おうと出ないです。その時の運次第で確率回収に消費するオーブ数は大きく変動します。確率は上がっていますが、少ないオーブ数で★5が出る保証はないです。
このようなことから「6%まで確率上がって損しているから、それを取り戻すために期間中に引かなければいけない」というような強迫観念に駆られてオーブを消費するのはあまり得策とは思えません。
過去に損した結果はこれから★5が出るかどうかには関係なく、今の排出率がこれから出る確率です。その確率はこれまで説明したような、運次第で消費オーブ数が大きく変動するような確率なので、必要以上に出やすくなっていると勘違いしていないか冷静になった方がいいです。
個人的には、確率上昇してしまったそんなに魅力的でないガチャにオーブを回すより、次の新英雄、伝承/神階英雄などの魅力的なガチャに投資する方がよっぽど得だと思っています。確率上昇に関係なく、それ以上オーブを使ってまで引きたいキャラがいるなら引けばいいし、オーブを使ってまで引きたいキャラがいなければ引かなければいいと思います。残りオーブ20、かつ、確率上昇していない状態でも、出る時は出ます。
消費オーブ数にもよりますが、確率上昇によって平均★5ピックアップ確率は大体3.3~3.5%とかに収束します。最初からそのくらいの確率のガチャだと思って確率上昇を気にせず引きたいキャラがいるなら引く、という考え方がシンプルで考えやすいし、健全だと思います。
オーブは欲しいキャラを引くために使うもので、上がった排出率をリセットするために使うものではないという事は忘れないようにしたいですね。
まとめ
★5ピックアップ排出率が6%まで上昇すると..
- ★5が1体出るのにかかるオーブ数
- 5~96オーブ程 → 5~55オーブ程に減少
- ★5が同じ盤面に出る確率
- 13.9%→24.5%に上昇
このくらいの変化だと..
- 現実的な試行回数では、運で簡単に覆る
- 確率上昇していても爆死する時は爆死する(それまでの爆死は将来の引きに関係ない)
- 確率が誤差10%程度に収束するには1万オーブ以上確率回収に消費する必要がある
個人的な見解
- 確率上昇していようがいまいが、出る時は1発で出る、出ない時は140オーブでも出ない
- 必要以上に出やすくなっていると勘違いしてはいけない
- 上昇してしまった確率は気にせず、引きたいガチャにオーブを使うべし