この記事は、私がファイアーエムブレム聖戦の系譜の初見プレイした感想をまとめたものです。
私がゲームプレイ時にストーリーに関する情報をメモした内容は「聖戦の系譜 ストーリーに関する情報メモ」にまとめています。また、X(旧Twitter)上でも「#ぷあーと聖戦」というハッシュタグで進捗や感想を投稿していたので、興味のある方はどうぞ。
- 注意点
- クリア済みのFEシリーズ
- FEとは思えない世界感を感じさせる異質なオープニング
- 昔ながらのJRPGを遊んでいると錯覚するほどの広大な フィールド
- まるで世界一周旅行をしているような親子世代を通した壮大な 旅
- 推理小説を読んでいるかのようなストーリー上の謎解き
- 説得力のある歴史設定とその歴史を背景とした国や人々、歴史に隠された秘密
- 予想を裏切るストーリー展開、最後の最後で明かされる驚きの真実
- 憎いが憎むことができない魅力的な敵キャラクターたち
- 胸糞悪い敵キャラクターたち
- つい応援したくなるような仲間同士の恋愛、そのやりとり
- 聞くだけでその旅を思い出す印象的な音楽
- シビアだけど段々とのめり込んでいく金策
- Switchの便利機能のおかげで現代のFEに慣れてる人でも快適に遊べる
- 昔のFEとは思えないプレイヤーへの配慮
- 風花雪月との共通点
- 聖戦の系譜の不満点
- 聖戦の系譜リメイクの可能性は?
- 終わりに
注意点
この記事には聖戦の系譜、風花雪月のネタバレを含みます。ネタバレを踏みたくない方は読まない事をお勧めします。
私は聖戦の系譜を初見で一周しただけですので、もしかしたら間違った解釈などあるかもしれませんが、その辺はご容赦ください。
聖戦の系譜の比較対象として、風花雪月、エンゲージのネガティブな内容も一部含まれていますが、批判の意図は一切ありません(どちらも大好きな作品です)。
クリア済みのFEシリーズ
前提として、私が最後までクリアしたことがあるFEシリーズは以下だけです。少ない。
- 覚醒
- 風花雪月(+無双風花雪月)
- エンゲージ
初FEは封印の剣ですが、当時の私には難しすぎて序盤でやめてしまいました。覚醒から遊びやすくなってFEの面白さを感じたのをきっかけにFEシリーズの ファンになりました。
FEとは思えない世界感を感じさせる異質なオープニング
ゲーム起動直後のオープニングでは、かつて魔王の闇により悪夢の中にあった世界、それを救った十二の神々の伝説を語る神秘的な映像が流れます。大陸に伝わる 伝説が語られるのみで、登場キャラクターは一切出てきません。近年のFE作品ではまるでアニメのオープニングかのような映像が流れますが、聖戦の系譜はスーファミ時代というのもあり、かなりシンプルなオープニングでした。近年のFEに慣れてる私にとってはかなり異質に感じる出だしです。
一体この伝承が物語にどう関係してくるのか、このときは全く想像がつきませんでした。そんな伝説がこれから冒険する世界に存在するんだ、かつて「十二の神」がいたんだ、ということだけをうっすらと認識させられます。しかし、シグルドらと冒険を始めた私は一旦この伝説を忘れることになります。シグルドらユグドラル大陸の人達も、大陸に伝わる伝承は耳にしたことがあるはず。しかし、日常生活の中でそれを意識することはほとんどなかったでしょう。
そして、この伝承は物語を進めるにつれ、段々とストーリーとの関連性が濃くなってゆき、やがては主人公らの運命を左右するほど大きな意味を持つようになります。
今思えば、私はこのオープニング映像を経て、主人公らと大陸の伝承について同じ視点を持たされていたように思います。
シグルドらも人伝いに大陸の伝承を耳にしていて、詳しくは知らずとも、なんとなくは知っていたでしょう。オープニング映像を通して、私はシグルドらと同じ視 点を持たされた訳です。
これは物語への没入感を増幅させるための工夫だったのかもしれませんね。
昔ながらのJRPGを遊んでいると錯覚するほどの広大な フィールド
始めてシグルドを操作できるようになったとき、マップ全体を確認する訳ですが、初見の感想はシンプルに「ひろっ!」でした。
ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーのようなJRPGでフィールドを探索しているような気分。絶対に使わないであろう隅っこに滝のタイルとか作ってあって、なんでこんな無駄だとも思えるエリアが多数あって作りこまれてるんだろう?と疑問に思いました。もしかして、また別の章でこのマップでプレイすることになって、そのときに必要になるのかなぁとか思ってました。
そして、1章になり、私はあることに気づきます。
「え?これ大陸全部がマップになってない?」
序章で無駄とも思える作りこみの意味を理解しました。
「やばいって。FEでその発想はなかった。」
思わず声に出してしまいました。
この仕様、本当にドラクエとかFFやってるみたいに、世界の広さを感じさせてくれます。自分の足で歩いて、どこで何があったのかを把握していく。とても没入感を得られます。
風花雪月で個人的に悪かったと感じた点として「どこで何があったのか分かりにくい」というのがありました。聖戦のマップ仕様は、この問題に対する究極のソリューションだと思います。
特に前半、名前だけしか聞かなかったイザークやレンスター、トラキアなんかが後半攻略マップとして出てきたときは感動しました。例えば、風花雪月だとパルミラ、ダグザとか、名前だけ出てくる地名って本当に名前しか出てこなかったりするので、「これがあのイザークか!」と実際に歩いて回れることに感動しました。
このマップ仕様は現代のFEにも適用できないの?
あまりに画期的なマップだったため、この仕様を現代の3DのFEに適用したらどうなるか?なんて想像したりしました。
そう、聖戦の3Dリメイクがあったとしたら、この大陸全土がマップになってる仕様は踏襲することになります。いや、敢えてそうしない選択肢はありますが、もはやこの聖戦の最大の特徴と言っても過言ではないマップ仕様をなくしてしまうのはあまりに惜しいし、プレイヤーとしても残念だから、開発側としても実現したいはず。
「オープンワールドFE」という単語が脳裏に浮かびました。今までFEをオープンワールドにする必要性はないと思っていたんですが、聖戦をプレイするとありだと思えてきます。
聖戦くらい広大なマップをリッチな3Dで再現するとなると、オープンワールドのようにプレイヤーの周りのアセットを都度読み込むような仕組みが必要になりそうです。そして、FEエンゲージはUnity製です。Unityにはオープンワールドゲームを作るための機能が用意されています。つまり、エンゲージでUnityを 採用したのは聖戦のリメイクの布石でもあった訳だ!(んな訳ない)
真面目に考えると、Unityはマルチプラットフォームに対応しているため、特定のプラットフォーム向けにはどうしても性能を最大限に引き出すことが難しいです。特にSwitchのような性能の低いハードに対しては処理負荷の問題は常に付きまといます。Unityの機能だけでは処理負荷的に厳しく、十分リッチ で、かつ十分な速度を出すにはSwitch専用に最適化していく必要があったりするので、Unityを使っているから簡単ということはないはずです。
ちなみにエンゲージの外伝に聖戦10章のマップがあります。
聖戦のオリジナルマップより大分縮小されてしまっています。
これはプレイヤーが遊びやすくするための配慮でそうなったのではないかと推測します。
そうです。広すぎるとそもそもSRPGとして遊びにくくなるというデメリットもあり、一長一短なこの仕様自体をそのまま採用すればいいという話にはならないのが 難しいところ。
話が脱線してしまいましたが、とにかく、聖戦のマップはFEとは思えない冒険感を味わえる広大なマップ仕様で、特にスーファミ時代にこの発想を形にしたのは本当に凄いなぁと思いますし、是非今後のFEでもこのようなチャレンジをしてほしいと感じました。
まるで世界一周旅行をしているような親子世代を通した壮大な 旅
前述の通り、聖戦の系譜は大陸全土が対戦マップになっています。そして、同じマップを二度プレイすることはありません。
シアルフィから始まったシグルドの冒険は、大陸のおおよそ半分を巡った5章、バーハラで途絶えます。6章からはその息子であるセリスがシグルドの意思を受け継ぎ、グランベル帝国に支配された国を開放する旅に出ます。その旅でシグルドが訪れることがなかった大陸の残りの半分の国々を巡ります。
そして、最後には父親の故郷であるシアルフィへ、そして、父親が処刑されたバーハラで最終決戦に挑む形となります。
途中、主人公は変わりますが、ストーリーを通してプレイヤーは大陸全土を1周することになります。
私はセリスでシアルフィに戻ってきた時に「本当にユグドラル大陸を1周してきたんだな」というのを実感しました。親世代からシグルド軍に同行していたオイ フェやシャナンも同じことを感じたことでしょう。
大陸全土がマップになっている仕様のおかげで、「自分の足で歩いてきた」という実感が強く、本当に世界一周旅行でもしたような達成感と同時に旅疲れのようなものがありました。
疲れを感じるくらい没入感があったということで、改めて没入感の高いFE作品だったなと感じます。
覚醒やエンゲージのような大陸マップ仕様でもどこで何が起こっているかを十分認識することができ、素晴らしい仕様だなと思っていましたが、聖戦はそれに加えて「自らの足でその大陸マップ全体を歩く」という遥か上をいく没入感を与えてくれる仕様で非常に画期的でした。
推理小説を読んでいるかのようなストーリー上の謎解き
聖戦のストーリーは、前半、まるで推理小説でも読んでいるかのような謎解きがあり、非常に面白かったです。
物語の前半、マンフロイのもくろみにより、様々な事件が巻き起こります。マンフロイの狙いはシギュンの息子と娘を "交わらせる" こと。1章の時点ではシギュンやその息子、娘が何者なのかは分かりません。察しのいい人なら気が付くかもしれませんが、私はまさかシグルド軍内にいる人物がその該当者だなんて思いもしてませ んでした。今思えば1章のタイトルや村人の会話から娘がディアドラだって言ってるようなものなんですけどね。
1章クリアの時点でここまでの情報は分かりました。一体シギュンの息子と娘はだれなのか?シギュンの息子はバーハラにいるから、もしかしてアルヴィスが息 子?とは思っていましたが、確証を得る根拠もなく、とりあえずストーリーを進めます。
2章では1章でシグルドが一目惚れして結婚したディアドラを操作できるようになります。そして、ディアドラの「神々の系図」を見ると「Narga」のところ が光っていて自分の中で衝撃が走りました。
まさか...
2章を進めるとヴェルトマー家でのシギュンとクルトの不倫話が聞けます。それらの情報を整理して私は確信を得ることになります。
「うそだろ!?二人の血が "交わる" ってどういうことなの?生贄として二人の血を捧げるとかそういう意味だよね?え?まさかあっちの意味じゃないよね?」
この時点ではまだ「二人の血が交わる」が具体的にどういう意味なのかに確証がなかったため、私は「子供を産む」という意味でないことを願うばかりでした。
そんな願いもむなしく、以後のストーリーでディアドラは黒魔法で記憶を消され、アルヴィスと結婚することになります。
そして、5章ではまさかのキュアン、エスリンの死亡、そして、シグルドはバーハラでアルヴィスの罠に嵌められ、処刑されてしまいます。死ぬ間際にディアドラのことを知らされたシグルドのことを思うと、いたたまれない気持ちになりますね。
このように、聖戦のストーリーは、プレイヤーに適度なヒントを与えつつ、プレイヤーが自分でその答えにたどり着くように設計されていて、まるで推理小説を読んでいるかのような謎解きの面白さを感じました。
ちなみに3章になった時点でディアドラがシギュンだと気づいていた人をX上でアンケートした結果が以下です。
昔のゲームなのでさすがに覚えてない人だったり、子供の頃でストーリーを気にしていない人が多いと思いますが、気づかなかったという人もそれなりにいました。気づかなかった人は3章でディアドラがマンフロイにさらわれる時に知ることになりますが、そこで驚いたんでしょうね。謎解きというものは、答えを教えてもらったとしても、今までのヒントと自分の中で結びつきえすれば、謎の快楽物質が脳内に出ますから。
それまでのヒントで気づく人もいれば、気づかない人もいる。絶妙なヒントの与え方だったのかなと思います。
説得力のある歴史設定とその歴史を背景とした国や人々、歴史に隠された秘密
聖戦の系譜は、風花雪月ほどではありませんが、歴史設定がしっかりと作られています。以下は冒頭で提示される年表です。
年 | できごと |
---|---|
001 | ユン河の西にグラン王国成立 |
230 |
共和制への移行 |
310 |
領土の拡大、繁栄の時代 |
440 |
大司教ガレに暗黒神が降臨 「ロプト教団」の胎動 |
447 |
十二魔将の乱 共和国グランの滅亡 |
448 |
ガレ大司教、帝位につく ロプト帝国の成立 |
449 | 大粛清 犠牲者十万人以上 |
452 | ミレトスの嘆き 暗黒神へのいけにえとして多数の子供が火に投じられる |
453 | エッダの虐殺 犠牲者、数万人にもおよぶ |
535 | 皇族マイラの反乱 |
611 | 各地に自由解放軍が興る |
632 | ダーナ岩の奇跡 解放軍の戦士に神が降臨し十二聖戦士が誕生する |
633 | 聖戦の始まり |
648 | 聖者ヘイムにより暗黒神の化身、皇帝ガレ十七世が倒される ロプト帝国の滅亡 十二聖戦士、グランベル七王国と周辺五王国を建国する |
649 | グランベル王国の成立 |
757 | グランベル国軍 東方の国イザークへ遠征 動乱の幕開け |
ゲーム開始時点で存在する国はロプト帝国が滅んだあと、各十二聖戦士が建国した国となります。
この歴史を背景に、大罪を犯したロプト帝国の子孫は、本人に罪がなくても、迫害され、見つかれば火あぶりとなりました。彼らはイード神殿に身をひそめながら 生きるしかなくなりました。
マンフロイもその一人でした。彼がロプト帝国を復活させようとしたのも、人間の差別と迫害がきっかけです。そして、ファラとロプトウスの血を引くアルヴィスも差別のない理想的な世界を作るためにロプト教団と協力関係になったのです。
当時虐殺された人々のロプト帝国への恨みが、直接関係のないその子孫にまで波及し、また新たな時代に大きな恨みとなって動き始めた復讐劇。恨み合うことのない理想郷を作ろうと画策して、その理想郷のための犠牲としてシグルドの命と彼の大切なものを奪い、その他にも多くの人の命を犠牲にするも、結果的にロプト教団に利用され、自らの愛する人までもを奪われた哀れな男の運命。
しっかりと作られた歴史設定があったからこそ、それに支えられている本編のストーリーにも説得力が生まれているのだと思います。
風花雪月開発陣へのインタビューでは、草木原さんがストーリーで語られないことも含めてトータル一万年分くらいはある年表を作っていると話していました。
風花雪月においては、この歴史設定の細かさが本当に素晴らしくて、遊びながら収集した情報から、歴史を紐解いていく作業も熱中できる要素の1つでした。
聖戦の系譜のシナリオ担当は別の方(加賀昭三さん)ですが、おそらく同じようにゲーム中で語られる以外のことも含めたユグドラル大陸の年表を作っていたんだろうなぁと想像します。
そして、風花雪月も聖戦の系譜も同じなんですが、このゲーム中で語られている伝説には隠された真実があります。
聖戦の系譜においては、暗黒神ロプトウス、十二の神はすべて古代竜族だったことがストーリー中に明かされます。「神が降臨した」「神から力を与えられた」というのは「古代竜族の生き血を飲み、その力を得た」「竜族の力を込めた武器を与えられた」という意味でした。結局ファンタジーには変わりないんですが、抽象的な表現がより具体的になることで、これまで語り継がれてきた歴史に更に説得力が増します。
こういう歴史上語り継がれたことと、そこに隠された真実が設定されていると、歴史への興味や疑問、真実を知った時の驚きに繋がるので、個人的には大好物です。
最新作のエンゲージは、コンセプト的にそういった作りこみをするような作品ではないと理解しているので、歴史設定が浅いのは仕方がないとは思いますが、またいつかこういった歴史設定が作りこまれたFE新作がリリースされるのを期待しています。
予想を裏切るストーリー展開、最後の最後で明かされる驚きの真実
ストーリー展開も最後の最後まで私の予想を裏切ってくれて、飽きませんでした。
前半では以下のように気になること、予想外のできごとが連続して先が気になり続けました。
- なぜ同盟国のヴェルダンから襲撃が?
- シギュンの息子と娘は誰?
- 親友エルトシャンとの戦い
- イザーク遠征にいったクルト王子の暗殺
- 絶体絶命のピンチにシレジアからの救いの手
- 父親との再会と別れ
- まさかのキュアンとエスリンの殺害
- まさかの主人公の処刑
いや、本当に5章でシグルド軍が終わるなんて微塵も思ってなかったので「ええええええ!!!」って感じでした。
後半は帝国への反乱軍として順当に国を制圧していく流れにはなり、前半ほどの急展開はありませんが、前の項目で話したような歴史上の真実が徐々にレヴィンの口から明かされていきます。
私は後半のレヴィンに怖さを感じていました。ロプト帝国成立を阻止するためであれば身内であっても犠牲は顧みない。そんな態度で、前半のレヴィンとは別人のように感じていました。まるで前半のアルヴィスのようなサイコパスさ。レヴィンはグランベル帝国ができてから長い間、大陸中を駆け回っていたので、その中できっと価値観が変化したんだろうと思っていました。
しかし、ユリウスを倒してエンディングで、レヴィンが実はレヴィンではなかったことが分かります。彼は古代竜族の一人フォルセティでした。
正直、このときは状況がよく呑み込めなかったんですが、後で整理して、私が後半のレヴィンに怖さを感じていたのもすごく納得がいきました。
クリア後の隠しデモを見ると、レヴィンは過去にマンフロイに殺されており、そのときにフォルセティがバルキリーの杖でレヴィンを蘇らせ、レヴィンの中に意識 を住まわせたんだろうなぁということが分かりました(自力で周回は無理なので動画で拝見しました)。
レヴィンとは別人のように感じるが、ぎりぎりレヴィンではありそう、という人格設定が非常に巧妙だと思いました。
聖戦のストーリーは全体を通して驚きがたくさんあり、かつ、それらに矛盾や違和感、ご都合主義を感じない、というのが凄いと思います。
FEエンゲージでもストーリー上は大どんでん返しがあったりで、個人的には最後まで楽しむことはできたんですが、ご都合主義や強引に繋げたような違和感を感じるシーンが多かったのが残念な部分でもありました。
前の項目でも触れましたが、聖戦は歴史設定から作りこまれていたからこそ、矛盾が生まれにくく、かつ、プレイヤーに驚きを与え、興味関心を持たせ続けられる 巧みなストーリーが作れたんじゃないかと思います。
憎いが憎むことができない魅力的な敵キャラクターたち
聖戦を通して、憎いけど憎むことができない印象深い敵キャラクターがいます。
アルヴィス
まずは何と言ってもアルヴィス。
アルヴィスは最初から最後まで重要な立ち位置として物語に関わってきます。シグルドからディアドラを奪い、処刑した人物であり、セリスにとっては父親の仇です。主人公であるシグルドと視点を重ねていたプレイヤーとしても、憎い敵の一人です。ただし、アルヴィスは決して悪人ではなく、むしろ自身の正義を持ち、理想郷の実現のためにシグルドを殺害しました。
アルヴィスが皇帝となったグランベル帝国は、ユリウスが豹変するまでは悪くない国だったと言います。
結果的にマンフロイに利用されて、大陸滅亡の危機に陥れた張本人にはなってしまいますが、彼は最後までロプトウスに抗う姿勢を見せました。
終盤では自ら悪役を演じたまま、セリスにティルフィングを託し、その聖剣で討たれました。また、彼が子供狩りで捕らえられた子供たちを助けるようイシュタル に指示したことで、子供たちを助けることもできました。ユリウスを倒すための切り札である聖書ナーガをユリアが入手できたのもアルヴィスの機転のおかげでした。
セリスもエンディングでアルヴィスのことを「運命に押しつぶされた哀れな人」だと言っています。
ヴェルトマー家の紋章が「炎の紋章」であることがエンディングで分かりますが、その通り、ヴェルトマー家の当主アルヴィスが「ファイアーエムブレム」という 作品の中心人物、ある意味で主人公だったとも言えます。作ろうと思えば、アルヴィス視点の外伝で一作品作ることができそうなくらいです。
シグルドを殺害した仇敵であり、憎むべき人物のはずなのに、アルヴィスのことを知れば知るほど、簡単には憎むことができない敵キャラクターでした。
トラバント
トラバントはシグルドの親友キュアンとその妻でありシグルドの妹であるエスリンを殺害した張本人です。プレイヤー目線でも、キュアンの息子であるリーフや、 臣下のフィン視点でも、決して許すことができない敵です。
トラバントは彼らを殺害しましたが、一緒にいた幼いアルテナは殺さずに国に連れ帰って、自分の子として育てました。本人はゲイボルグを扱えるアルテナを自分のために利用するために連れ帰って育てたとアリオーンに話しています。
アルテナはトラバントのことを本当の父親だと思い込んで成長しました。
そう、トラバントは実の息子のアリオーンからだけではなく、アルテナからも父親として尊敬されていたのです。アルテナを本当の娘だと思って育てなければ、ア ルテナが大人になるまで父親だと気づかずに成長するのは不可能だと私は思います。そして、アルテナをトラキア王国の姫として大人になるまで立派に育て上げる労力は、ゲイボルグを自分のために利用したい、という利益のためだけには到底釣り合わないようにも思います。
トラバントは他人を裏切りながら生きてきましたが、それは国を守るためでした。ブルームにレンスターを横取りされて、トラキア半島統一の夢は叶いませんでしたが、キュアンやエスリンの殺害もトラキア半島を統一し、国を豊かにするためでした。
9章ではアルテナが自分の本当の親を殺したのがトラバントであるという事実を知って、トラバントに殺意を向けます。そんなアルテナを殺すフリをしたアリオーン。それを見てトラバントはもう疲れたのだとグングニルをアリオーンに託し、銀の槍でセリスらに向かっていき、死亡します。アリオーンには民をこれ以上苦しませるなとだけ伝えていることから、彼が国や国民のためを思っていることは分かります。
国のために戦い、国のために人を裏切り続けたが、実の娘のように育てたアルテナにも裏切られ、もうこれ以上裏切り、裏切られながら生きるのに疲れてしまったのかもしれません。
結局トラバントの腹は最後の最後まで読めませんでしたが、決して悪人ではないことは行動や発言から分かります。キュアンやエスリンを殺害した憎い敵でもあ り、でも決して憎むことができない不思議な敵キャラクターでした。
イシュタル
イシュタルは多重人格を疑うレベルで、言動に一貫性がない敵キャラクターでした。
10章で子供狩りをされた母親に同情するような発言をしますが、ユリウスから反逆者を血祭りに上げる殺人ゲームの誘いを受けると「そういうことなら喜んで!」と楽しそうに引き受けます。
反逆者とは言え、まるで人を殺すことをエンタメと思ってるような残酷さを感じました。その中にはティニーもいるのに。
そうかと思えば、終章で、子供狩りで捕まった子供たちを救出してくれます。しかし、結局は敵将としてセリス軍の前に立ちはだかります。
アルヴィスの側近フェリペによると、イシュタルはもともとは優しい人物だとのことです。それは本当なのでしょう。
また、FEHのユリウスの英雄紹介ページではイシュタルがユリウスの変貌に心を痛めていると説明があります。つまり、イシュタルはユリウスが変貌する前から彼を愛していたということになります。
よって、言動に一貫性がない大きな原因は愛する恋人ユリウスの変貌が原因と推測できます。心優しいユリウスを知っているが故に、その優しいユリウスへの恋心、変貌後の残虐な一面、それに抗う自分の中の正義心との葛藤があったのでしょう。また、彼への恐怖心も同時にあり、様々な感情がぐちゃぐちゃなまま整理がつかず、ずっとユリウスから離れることができなかったのかもしれません。暴力的な一面と優しい一面を持つDV彼氏に洗脳されてしまった彼女みたいな状態とでもいいましょうか。
イシュタルは最後に死ぬつもりでセリス軍に戦いを挑んできます。
自分の正義を中途半端にしか貫き通すができず、残忍になってしまった恋人から離れることもできず、自分の意思の弱さに、もう戦って死ぬことでしか、答えを出せなくなってしまったのかもしれません。
聖戦の系譜でもっとも哀れな敵キャラクターだったとも思います。
※コメントでイシュタルは家族を反乱軍に殺されているという観点をご指摘いただきました。それを踏まえれば、イシュタルにとって反乱軍は家族の仇でもありま す。そしてレヴィンからロプト教団の目論みを聞いているセリスらと異なり、イシュタルは今の帝国の危険性を知らない可能性があります。プレイヤー視点だと子供狩りのようなことをする危険な帝国を止めたくて反乱しているので、私はイシュタルが子供を助けつつも、反乱軍とは敵対し続けることに矛盾を感じました。しかし、イシュタル視点ではロプト教団の危険性について知らなかったり、反乱軍を恨む気持ちが強いと考えれば、イシュタルの行動にはいくばくか納得がいきました。10章の反逆者の血祭りゲームを楽しそうに引き受ける会話だけ引っ掛かりますが、もしかしたら私のテキストの解釈違いなのかもしれません。テキストから感情を読み取るのも、表現するのも難しいなと感じます。
ユリウス
ユリウスは残忍な性格のラスボスですが、かつては聡明で心優しい少年だったと言います。マンフロイが黒い聖書ロプトウスを持ってきてから、残忍で冷酷な性格に変貌してしまったと語られています。ユリウスが過去にナーガに邪魔をされたことについて言及していることから、ユリウス自身にロプトウスの意思があると解釈できます。ロプトウスが憑依しているような状態だと言えるでしょう。
そう、だから本当の悪はユリウスではなく、竜族ロプトウスです。
もはや私はユリウスに同情の念は一切沸きませんでしたが、もし、ユリウスが優しかった頃の描写がゲーム中にあれば、躊躇していた部分はあったかもしれません。
ユリアはそれを見た上で、大好きだった兄であるユリウスを討つ決意をしています。今思えば相当な決意だったと思います。
イシュタルにはそれができず、自死の道を選んでしまったのかもしれません。
ユリアの意志の強さを示す対比として、イシュタルというキャラクターがいたとも考えられます。
胸糞悪い敵キャラクターたち
聖戦の系譜はやたら胸糞悪い敵キャラクターが多かったのも印象的です。その中でも特に胸糞悪いキャラクターを紹介します。
シャガール
聖戦の系譜のキングオブ胸糞はシャガールです。父親を私利私欲のために殺し、マンフロイに利用されているだけであることに気づかない愚かさ。
そんなクズ国王のために死んでいく祖国への忠誠心の強い将軍や王たち。2章でどれだけザインを仲間に引き入れたかったことか。
シャガールを説得しようとしたエルトシャンを牢獄に幽閉し、自分がピンチになれば、そのエルトシャンを盾にする。最終的に命の恩人でもあるエルトシャンを処刑する始末。そんなことになるなら、せめてシグルドの手で葬ってやればよかったと後悔しました。
アンドレイ
4章では、マーニャの飛行部隊を自身の弓部隊バイゲリッターで壊滅させ、「はっはっは、面白いように落ちる。まるでトンボとりでもしているようだな」と胸糞悪い名言を言い放ち、去っていきます。
5章ではそのバイゲリッターを過信して、シグルド軍に討たれます。自分に力があると勘違いしている愚かさ。 そして、この男、シャガール同様にユングヴィ家当主になるために父親を殺しています。エーディンやブリギッドの弟とは到底思えないクズ野郎でした。
不快な名言を残した人物で、かつ、エーディンの弟という衝撃もあり、強く印象に残っています。
胸糞悪いキャラクターの特徴として以下があるなと思いました。
- 私利私欲のために簡単に人を裏切る
- 自分の力を過信している
ヒルダも残忍で胸糞悪いキャラクターではありますが、夫や子供を殺されたことを恨む発言をしていることから、身内を裏切るような人間ではなさそうという点でシャガール、アンドレイと違います。ティルテュをイジメてはいたので、本当に近い身内だけにはなりそうですが。
トラバントも人を裏切りますが、それは私利私欲のためではないですし、ブルームに戦争をしかけなかった点から自分の力を見誤らない賢明さがあり、この二人のキャラクターとは大きく異なります。
つい応援したくなるような仲間同士の恋愛、そのやりとり
聖戦の醍醐味のひとつである恋愛要素。聖戦では前半のカップリングで子世代が変化するので、誰と誰が恋人になるかが非常に重要でした。
そもそも私は味方同士が恋人同士になることや、それが子世代に影響するなんてことは知らなかったので、ほとんど成り行き任せでした。
4章で突然シルヴィアとフュリーによるレヴィン争奪戦が始まり、これは幼馴染のフュリーとレヴィンをくっつけてあげたいと思い、恋愛コーディネーターの活動を始めるに至りました。そもそも軍内の恋愛関係がどうなっているのかを把握していなかったので、そのときに軍内の恋愛状況を整理した図が以下です。
エーディンがモテモテすぎて驚いたのもありますが、ここでアーダンとアイラが恋愛関係になっているのにも興奮しました。変な意味じゃなくて、アーダンは2章で自分がモテない事を嘆いていたので、そのときにアーダンには是非恋人を作ってもらいたいと思っていたからです。(前半隠しアイテムだけ攻略情報を見てました)
あと、恋愛イベントでアゼルとティルテュが幼馴染であったことを知りました。幼馴染はくっつけたくなる民なので、アゼルとティルテュはずっと一緒に行動させ るようにしました。
4章の終盤では、レヴィンのド直球な告白も見れて、新米恋愛コーディネーターとしては感無量でした。
5章が始まる頃には軍内は以下のような関係になっていました。
相変わらずモテモテのエーディン、ユングヴィ姉妹の両者から好かれてるムカつくミデェール、順調なアーダンアイラ、4章で兄妹だと分かって絶対阻止しなければならないと決意したクロードとシルヴィアの恋愛。6章はどうなってるかな?なんてワクワクしながら、ストーリーを進めていきました。
そして、突然あのバーハラの悲劇が。まさか5章でシグルド軍が終わるなんて微塵も考えてなかったので、恋愛も中途半端なまま子世代に移ることになってしまいました。
子世代でも恋愛会話を楽しむことができました。ときには告白してフラれてしまった可哀そうなレスターなんていう名前の男子もいましたが..
最終的に子世代は以下のような関係で冒険に幕を閉じました。
最近のFEシリーズでは、主人公と仲間の誰かが結婚したり、仲間同士の支援値といった仕様はありますが、仲間同士の恋愛、結婚はなかったので、軍内の恋愛を 取り繕いながら見守るのはとても新鮮で楽しかったです。特に誰と誰が結婚するかで子世代が分岐していく点は、何周も色々なカップリングを試してみたくなる周回要素としてはよくできていると思います。
会話をコンプしようとすると相当大変そうですが..
聞くだけでその旅を思い出す印象的な音楽
聖戦は国ごとに別々のBGMが用意されており、クリア後にBGMを聞くと、旅の思い出が蘇ってきます。その中でも特に印象に残っているBGMを紹介します。
2章 アグストリアの動乱
2章のアグストリアの動乱のBGMは特に印象に残っています。FEHで聞いていた時から印象に残っているBGMでもありました。情緒的で、もの悲しさがあ り、ボーカル曲のような印象的なフレーズが特徴的な楽曲です。
賢王イムカの暗殺、アグストリアから裏切られたノディオン、始まってしまった内乱、それに便乗する略奪、混乱する国民。
忠誠を捧げた祖国に裏切られ、祖国が親友であるシグルドと敵対してしまったエルトシャンの複雑な気持ちを表しているようにも感じます。
余談ですが、二次創作の「アグストリアの動乱を歌ってしまった」を教えてもらってからは、2章をプレイ中はずっと頭にその歌が流れ続けてしまいました。
公式からも歌唱バージョンのアレンジが出ていて、デモを聞くだけでも非常に素晴らしい楽曲に仕上がっているのが分かります。
本来はオフラインイベント「ファイアーエムブレム EXPO II」で演奏される予定だった楽曲とのことですが、コロナ禍で中止になり、CDとしての発売のみになったようです。是非ライブで聞きたい一曲ですね。
4章 空を舞う
ずんずんと降り積もる雪景色を想像させてくれる楽曲です。クリア後に改めて聴くと、シレジアでの旅が詳細に思い出されます。
- 軍内での恋愛イベントを初めて経験、特にレヴィンからフュリーへの印象的な告白
- スリープの杖の害悪さを初体験
- アンドレイのマーニャ殺害シーンの胸糞悪さ、それを助けにいけない虚しさ
この章では色々なことがありましたが、音楽を聴くだけでそれらが想起されるのは、その章を表現するのに適した音楽だったという証拠だと思います。
7章 砂漠を超えて
7章のBGMを初めて聞いたときはシンプルに凄く砂漠っぽくてタイトルにマッチしてていいなぁと思いました。4章もそうですが雪国、砂漠といった多くの人が同じような特徴を想像しやすい国については、BGMの作者の意図が視聴者に伝わりやすい、というのがあるのかもしれません。
そして、7章はやたら長い、というか主にイード神殿の立地が最悪すぎて、クリアまで65ターンもかかりました。最も長く聞いていたであろうBGMというのもあり、そういう意味でも印象に残っています。
終章 最後の聖戦
終章が始まった時、序章で聞いたフレーズが冒頭で流れます。
別の項目でも書いた通り、聖戦は親子世代を跨いで大陸を自らの足で一周する物語です。序章と全く同じ音楽ではないんですが、序章と同じフレーズが組み込まれているのは明らかで、シアルフィから始まったシグルドの冒険の始まりを思い出してしまいました。
序章からずっと旅を続けているオイフェこそ、シアルフィに帰還した際は同じ気持ちになったでしょう。終章のBGMは私にオイフェと同じ気持ちにさせてくれる 粋な音楽でした。
噂によると前半の他の章のフレーズも組み込まれているとか。私は序章のフレーズにしか気づきませんでしたが、それが本当ならかなり芸術点高いBGMですね。
シビアだけど段々とのめり込んでいく金策
最近のFEでは戦闘前の準備で仲間にアイテムを渡すのはノーコストで行うことができます。しかし、聖戦では中古屋を介してしか仲間にアイテムを渡すことができません。
キャラクターそれぞれに所持金があり、アイテムを中古屋で売買することができます。
最近のFE作品で当たり前にできていたことにコストが課されたので、最初は凄く遊びづらく感じました。でも、遊んでいると段々このコスト制のおかげで金策の面白さを感じるようになりました。
- 誰でボスを倒してアイテムを入手すべきか
- デューで誰にお金を渡すか
- そもそもデューでお金を稼ぎやすくするにはどうすればいいか
- どの武器使うべきか(修理代が高い武器の使用は避けたい)
コストがあることで、攻略にこういった試行錯誤が生まれ、一定の制約を課してクリアを目指すのが面白くなりました。
とは言え、やはりアイテムを色々なキャラに持たせて試行錯誤をする面白さの障害にはなってしまっています。最新作にも取り入れるべき要素かと言われると首を縦には振れないですが、これはこれで意外と別の面白さはあるなぁと感じました。
Switchの便利機能のおかげで現代のFEに慣れてる人でも快適に遊べる
Switch のバーチャルコンソールには「巻き戻し機能」「どこでもセーブ」機能がついています。
聖戦の系譜はスーファミ時代のFEなので、今のFE作品と比べるとかなり遊びづらさがあります。最近のFEではターン数を一定回数戻せるのが当たり前になりつつありますが、昔のFEにそんな機能はありません。
しかし、巻き戻しやどこでもセーブ機能というチート機能のおかげで、失敗したらすぐにやり直せるので、手返しよく試行錯誤ができます。
また、たまに理不尽な初見殺しがありますが、そんなときも巻き戻し機能のおかげですぐにやり直せます。
また、聖戦は全員が出撃できるという珍しい仕様になっていて、攻略にすごく時間がかかりますが、これらの機能を活用することでマップ攻略を章の最初からやり直すなんて自体にはまずなりませんでした。
昔のFEとは思えないプレイヤーへの配慮
聖戦の系譜では昔のFEとは思えないプレイヤーへの配慮を感じる点がいくつかありました。
ユニット一覧、会話の有無確認機能
ユニット一覧で各ユニットの様々な情報を一覧で確認できます。
この画面では会話があるキャラを確認することができます。これのおかげで会話が発生したときに気づくことができ、本当に重宝しました。
その他にも金策で重要な各キャラクターの所持金確認、闘技場のLV確認も重宝しました。
聖戦の特殊な仕様に適した機能がちゃんと用意されているので、ストレスなく楽しむことができました。
オートセーブ機能
オートセーブ(毎ターン開始時にセーブするか促す機能)が設定にあることには驚きました。もちろん、聖戦の系譜は特別攻略にターン数がかかるマップなので、 それもあってのことでしょうが、当時のゲームでオートセーブの有無を切り替える設定があるゲームは心当たりがないので、配慮があるなぁと感じました。プレイ中すごく重宝しましたね。SwitchのVCにはどこでもセーブ機能がありますが、ついセーブし忘れてしまうので、オートセーブのおかげで途中で詰んでしまっても、大分前に戻ってやり直さないといけない、ということはほとんどなかったと思います。
マップ確認機能
聖戦のマップは広いので、スタートボタンで起動できるマップ確認機能は重宝しました。
特にマップ確認機能で配慮があると思ったのは、Aボタンを押すと全体マップを透かして後ろの実際のマップも確認できる点です。
ちゃんとテストプレイして遊び易いように調整したんだろうなぁというのが伺えます。
死んでも復活できる
3章で死者を蘇生できるバルキリーの杖を入手することができます。昔のFEは死んだら戻らないという印象が強いですが、聖戦の場合、この杖で味方を生き返らせることが可能です。
と言いつつ、私は死んだら巻き戻し機能で戻していたので一度も使う機会はなかったです。しかし、それはSwitchのVCだからこそできたことで、もし巻き 戻し機能がなかったとしたら、この初心者救済措置は非常にありがたいものだったと思います。
風花雪月との共通点
風花雪月の開発インタビューで、聖戦の系譜が好きだという草木原さん、横田さんが風花雪月で聖戦の系譜を参考にした部分について話をされています。
私自身も聖戦の系譜を風花雪月の後にプレイして、風花雪月に凄く似てるなと感じる部分が多かったので、それらを紹介します。
しっかりと作られた歴史設定
まず、別の項目でも挙げましたが、大陸の歴史設定がしっかりと作られている点です。風花雪月を遊んでいるとき、遊べば遊ぶほど空白だった歴史が明らかになっ ていくのが楽しくて、歴史パズルを解くような感覚でゲームに熱中しました。
聖戦の系譜では、風花雪月ほどそういった要素は多くはないものの、冒頭から「歴史上の真実を知りたい」という欲求を掻き立ててくれた部分は同じでした。
前後編に別れた構成
これは開発者インタビューでも意識したと語られていますが、聖戦の親世代編/子世代編、風花雪月の士官学校編/戦争編で前編後編が分かれており、後編では前編から一定の時が経過している、という点が類似しています。
その辺りの話は風花雪月の開発インタビューを読んでいただけたら分かるのでここでは割愛します。
視点を変えれば善悪が逆転する様々な正義の衝突
聖戦の物語では、ロプト教団が基本的に悪として描かれていますが、アグストリアの村人の話でロプト帝国の末裔が毎年火あぶりにされているという話が聞けたり、7章のイード神殿を訪れた際にはレヴィンからはロプト帝国の末裔たちは祖先の罪で迫害され続け、砂漠に隠れ住むしかなくなり、やがて悪魔になってしまったという話が聞けます。
イード神殿ではロプトの末裔の子供によって描かれた暗黒神ロプトウス復活を願う落書きが見つかります。彼らにとって今の世の中は地獄であり、ロプトウスしかすがる神がいませんでした。そう、悪魔と揶揄される彼らからすれば、ロプト帝国の末裔を迫害する人間たちこそが悪魔だったのです。
また、アルヴィスもプレイヤー目線では主人公シグルドを殺害した敵ではありますが、アルヴィスの視点に立てば、ロプト帝国の末裔にあったような迫害や差別のない世界を作るための正義に基づいた行動でした。
また、ザインやエルトシャンもシグルドの前に敵として立ちはだかりますが、彼らは国を守るという正義がありました。トラバントも同様に国や国民のために人殺しを行います。
セリスら反乱軍と敵対するグランベル帝国の軍人だって、グランベル帝国を守るという正義があり、反乱軍に敵対しています。
中には私利私欲のために動くようなキャラクターもいますが、聖戦の系譜は全体を通して、善悪の判断が難しい対決が何度もあります。
そう、まさに様々な正義がぶつかり合う戦争。
風花雪月も3学級で異なる正義がぶつかり合う戦争が物語として描かれています。風花雪月の場合は各学級の担任になることで実際にそれぞれの正義をプレイヤー が体感することができるので、より正義とはなんなのかについて考えさせられます。
聖戦の系譜においても、物語全体を通して、正義とはなんなのかについて考えさせられたという点で、風花雪月と共通していると感じました。
全てを知るために要求される周回プレイ
聖戦の系譜では隠しデモが用意されており、15周しなければ全て開放されません。驚くほどの鬼畜仕様。その中にはフォルセティと後半のレヴィンの関係を示す重要なデモも含まれています。
一方、風花雪月は最初からルート分岐しており、フォドラの謎を知るためには全ルートの周回が必要になります。(金鹿編だけ遊べばフォドラの重要な謎は分かりますが)
全てを知りたいプレイヤーに周回を要求する設計も似てると感じました。
設定の類似要素が多い
設定の中に類似要素が多いと感じました。以下が具体的な類似要素です。
聖戦の系譜 | 風花雪月 |
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聖戦の系譜の不満点
昔だから仕方ない点ばかりなので、書く必要もない気がしましたが、一応不満に感じた点も書き残しておきます。
冒頭のストーリー説明が長すぎて理解できない
ゲームを開始すると、まず最初にグランベル国内の対立勢力の状況や、イザークでの事件と王子らの遠征、同盟国ヴェルダンからの突然の襲撃について説明が流れます。
正直、知らない人物が山ほど出てきて、それらの関係性を長々と説明されても、理解は全く追いつかず、よく分からないまま出陣することになってしまいました。
後から説明を見直し、図に整理することでようやく理解できました。
既プレイの方の話を聞くと、やはりここでは理解できず、よく分からないままゲームを始めてしまったという方が何人もいました。この辺りが分かっているか否かで、ストーリーを楽しめるか否かに関わってくるので、説明が分かりにくいというのは勿体ないと思いました。
スリープの杖が強すぎる
聖戦の系譜でもっともストレスを感じたのがこのスリープの杖です。
10マス以内の敵を数ターン動けなくするというもの。実際に受けると5ターンだったり3ターンだったり行動不能になります。レストの杖で回復できますが、レストの杖がない場合は、先に倒すか、魔防を上げて食らわないようにする以外の対策がありません。
10マスと射程がやたら長く、大体の場合は、スリープの杖持ちを守るように敵陣営が配置されていて、使われる前に倒すのは困難です。
そして10章以降、スリープの杖持ちが敵軍にたくさん配置されるようになります。ストーリーが進んで突然現れた敵にスリープの杖を食らうこともありました。
特に私はレストの杖をユリアに持たせてしまっていたため、10章以降、レストの杖はユリアと共に連れ去られてしまい対策方法がありませんでした。魔防上げることを意識してプレイしていなかったため、スリープの杖を受けない主力キャラはセリスとアレスのみでした。
仕方なく、誰かが行動不能になるのは諦めて攻略しました。
巻き戻し機能とかなかったら最後の方で投げ出していたと思います。逆に巻き戻し機能があるからこそ、今でもぎりぎり許せる性能にとどまっていると言えるのかもしれません。いや、でももう少し射程や行動不能ターン数をナーフしてほしい..
敵の攻撃範囲がわかりにくい
昔のFEなので仕方がないですが、最近のFEでは敵の攻撃範囲が簡単に視覚化できるのに対して、聖戦では選択した1体の敵の攻撃範囲しか確認できないので、 たくさん敵がいるときに安全地帯を探すのに手間がかかりました。
また、安全地帯をみつけても、キャラクターを動かす際は敵の攻撃範囲は非表示になるため、どこか分からなくなり、また確認するという手間も発生しました。
聖戦の系譜リメイクの可能性は?
聖戦の系譜リメイクを期待する声は多いようです。私もリメイクされたら嬉しいなぁと思いますが、聖戦の系譜をプレイしてみて、聖戦の系譜がリメイクされる可 能性は低いと思いました。その理由を説明します。
スーファミ時代だからこそ実現できたマップ仕様
聖戦をリメイクするならば、この聖戦のマップ仕様はプレイヤーとしても実現を望みますし、開発側もできるならば活かしたいと考えるはず。しかし、別の項目でも書いた通り、大陸全土がマップとして遊ぶことができる聖戦のマップ仕様を、現代の3DのFEに落とし込むにはハードルがあります。
- 動的に地形の3Dデータを読み込む仕組みの対応(これはやればできる)
- 広すぎると攻略に時間がかかってしまう問題
特に近年のFEは昔と違って、手軽に遊べることが重要視されます。このマップの広さは手軽さの足枷になりかねません。1章クリアするだけで5時間とかかかりますからね..最近のFEではあり得ない長さです。
現代でも遊びやすいFEとしてこのマップ仕様を活かす方法を模索するのは中々に骨の折れる作業だと思います。
情報量が少ないからこその想像する面白さ、下手すると公式が解釈違いを起こすリスク
聖戦は2Dで情報量が少ないからこそ、プレイヤーが足りない部分を想像する楽しさがあります。当然ですが、その想像はプレイヤーごとに異なります。
「そういうことなら喜んで!」というテキストを見た時に、楽しそうに言っているのか、真面目なトーンではきはきと言っているのか、本当のところは分かりません。私は楽しそうだと解釈しましたが、そうではないと思う人もいます。
様々な解釈ができるからこそ面白い。そして、長年愛され続け、プレイヤーによって多くの解釈が生まれた聖戦の系譜。そこに公式が追加で情報が加えられたら、 3Dになって表情がはっきりして、ボイスがついたらどうなるでしょう?
スーファミ版では分からなかった本当の感情やニュアンスが分かるようになります。これはファンとしては嬉しい事でもありますが、これまでのプレイヤーのいくつかの解釈は否定されてしまう可能性があります。
そして、もはや聖戦の系譜のシナリオライターは開発元にはいません。人気を博した昔の作品の解釈を、現開発者が絞り込んでいくのは、自分だったら怖くてやりたくない作業です。公式の解釈違いになりかねませんから。
スーファミ版で解釈が分かれてしまう部分、そこの解釈を決めなければならないというハードルは高いと思います。
現世代に合わないドロドロの愛憎劇
聖戦の系譜が発売された1990年代は昼ドラが流行っていて、聖戦の系譜で描かれているようなドロドロの愛憎劇は一定の需要がありました。おそらく、シナリオライターの方も少なからず意識したのではないかと思います(根拠はなく、あくまで憶測です)。しかし、今はもう昼ドラは打ち切られ、近親相姦のような倫理観の面で叩かれかねない愛憎劇を題材としたドラマは見かけなくなりました。
更に最新作FEエンゲージでは「親子で楽しめるFE」を意識した話が開発インタビューで語られています。FEシリーズとしても新しい世代の若年層にファンを獲得していかなければならない時期です。
現代の若年層に、聖戦の系譜のようなシナリオがささるのかというとどうでしょう。もしかしたら、逆にささる可能性はありますが、一種の賭けになってしまうようにも思います。
現代に合わせてある程度シナリオの改変が必要になってしまうかもしれません。しかし、シナリオを改変してしまえば、それは本当に聖戦の系譜なのか..という気がしてしまいます。下手をすると誰にとっても幸せにならない結果になりかねません。
聖戦の系譜のシナリオを現代でどう扱うべきなのか、というのはリメイクのハードルになると思います。
風花雪月こそが現代版の聖戦の系譜と言っても過言ではない?
別の項目で書きましたが、風花雪月は聖戦の系譜を参考にしながら作られており、類似点が非常に多いです。聖戦の系譜をプレイしてみて、風花雪月は現代版にア レンジされた聖戦の系譜のような作品だったんだなと感じました。
もし、開発側にもそういう意図があったんだとしたら、敢えて聖戦の系譜を改めて現代版にリメイクする必要はないので、リメイクされる可能性は低いと思いまし た。
終わりに
聖戦の初見プレイ投稿を始めて最初に驚いたのが、聖戦ファンの多さと熱量です。
途中、ネタバレ回避のためにコメントを見ないようにしてしまいましたが、最後まで反応してくださった方々のおかげで、私もじっくりストーリーの考察を楽しみながら遊ぶことができたと思います。
そして、聖戦の系譜自体、ここまで感想で書いた通り、ストーリーやマップ攻略など、最近のFEとは大分違う部分が多くて、非常に新鮮で面白い作品でした。人 気作品というだけあるなぁと思いました。大好きな作品がまた一つ増えました。
FEH の方でも聖戦キャラクターに対して愛着がわいたので、今後より一層楽しめそうです。
長文感想になってしまいましたが、以上になります。つたない感想文でしたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント(4 件)
4(管理人) 2024-03-11 21:22 コメント&情報ありがとうございます。 |
3(ID: 4244504963) 2024-03-10 23:03 はじめまして |
2(管理人) 2024-03-10 21:15 貴重なご指摘ありがとうございます。終章でセリス軍の前に現れた時には、家族のほとんどを殺害されているという点はイシュタルの性格を考察する上で意識から抜けていたので、参考になりました。 |
1(ID: 4035364529) 2024-03-10 19:47 とても面白く拝読しました。2020年代に初見プレイの感想を読ませていただけて感無量です。 |