最近、『ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王』の初見プレイしました。私はFEシリーズを遊ぶ際、ゲーム中から得られた情報からいつ何が起こったかを表にして整理しながらストーリーを楽しんでいます。
エコーズにおいても同様に時系列の穴埋めパズルを楽しみながらプレイしていましたが、途中で時系列に矛盾を感じてしまいました。
この記事では、エコーズのゲーム中や開発者インタビューで語られている情報に矛盾があることを説明し、その矛盾がなぜ生じてしまったのかを考察します。
- ゲーム中の情報通りだとセリカは21~29歳になる
- 0章のセリカは「幼少期」
- 離宮が火事になったのは「今から十数年前」、謎の空白期間
- 離宮の火事、ラムの村滞在時でセリカの外見に変化がない
- セリカは10歳頃まで離宮にいた
- 幼少期というには無理がある14歳という年齢
- アルムの年齢設定にも違和感が生じる
- 会話テキストの修正漏れにより矛盾が生じた?
- ゲームデータの解析情報によるとセリカは17歳
- まとめ
ゲーム中の情報通りだとセリカは21~29歳になる
結論から言うと、ゲーム中や開発者インタビューの情報を整理していくと、セリカは2章の時点で21~29歳ということになってしまいます。
なぜそう言えるのか、以降、詳しく説明します。
以下の表を埋めながら、時系列を整理していくことで説明します。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | ??? | ??? |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | ??? |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) | ??? |
0章のセリカは「幼少期」
公式サイトのセリカの紹介文に以下の説明があります。
幼少期をアルムと共に過ごすが、ある事件を契機に村を離れ、ノーヴァ島で神官として暮らしている。
FEエコーズ公式サイトより
0章 394年のセリカは幼少期であることが分かります。幼少期の年齢に明確な定義はありませんが、せいぜい12歳くらいまででしょう。
このときのセリカの年齢を1~12歳としておきます。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | ??? | 1~12歳 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 1~12歳 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
??? |
離宮が火事になったのは「今から十数年前」、謎の空白期間
1章 ソフィア城にて「今から十数年前、離宮が火事になった」という話が聞けます。
「十数年前」を幅を持たせて 11~19 年前とします。すると、今が401年なので「382~390年」のできごとになります。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 382~390年 (今から十数年前) |
1~12歳 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 1~12歳 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
??? |
表を見て分かる通り、離宮の火事が起きて、セリカがラムの村に保護されるまで最低でも4年の空白期間があります。
最初は、離宮の火事が起きた後にセリカはすぐラムの村に保護されたのだと思っていました。しかし、この空白期間があることが分かってから、ラムの村に保護されるまでセリカはどこにいたんだろうと疑問に思うようになりました。
しかし、その空白期間についてはストーリーをクリアしても特に言及されることはありませんでした。離宮の火事、ラムの村滞在時でセリカの外見に変化がない
記憶の欠片「炎の中で」で、離宮が火事になったときの会話を見ることができます。以下が十数年前である382~390年のセリカの姿です。
そして、以下は 7 年前の 394 年のラムの村におけるセリカの姿です。
382~390年と394年で外見に全く変化がありません。
幼少期は成長が早いため 4、5年も経てば外見に変化があるのが自然です。小学校低学年と高学年では背丈も顔立ちも変わります。
しかし、セリカの外見には変化がない。私はこの記憶の欠片を見た時に強く違和感を感じました。
まぁでも多分、開発の事情でやむを得ず同じグラフィックを使いまわしたんだろうなぁと自分を納得させて物語を進めました。
しかし、実はこれが意図的なものだったということが後に分かります。
セリカは10歳頃まで離宮にいた
開発者インタビューでセリカは「10歳頃まで離宮で暮らしていた」ということが語られています。
── セリカがもともと王女であることを知っているのは、『外伝』とは大きな変更点ですよね。
草木原 それはアルムとセリカが2章の終わりで衝突する動機付けをしたかったのが大きいです。そこで王族であるというバックボーンをつけたくて、10歳くらいまでは離宮で暮らしていたという設定にしました。
開発者インタビューより
離宮の火事が起こるまでセリカは離宮で暮らしていた訳ですから、離宮の火事はセリカが10歳頃のできごとということになります。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 382~390年 (今から十数年前) |
10歳頃 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 10歳頃~12歳 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
??? |
あれ?なんかおかしくないでしょうか。
バレンシア暦としては、離宮の火事からラムの村にセリカが保護されるまで最低でも4年経っています。しかし、セリカの年齢的には幼少期と言えるぎりぎりの年齢で考えても2年しか経っていません。
バレンシア暦とセリカの年齢の間に矛盾が生じてしまっています。
幼少期というには無理がある14歳という年齢
先ほども書いた通り、ゲーム内の情報通りだと、離宮の火事からセリカがラムの村に保護されるまで最低でも4年、最大で12年の空白期間があります。
そして、開発者インタビューの情報から、離宮の火事はセリカが10歳頃のできごとだとわかります。
それらの情報を合わせると、10歳頃から4~12年後が0章となる訳です。つまり、ラムの村での幼少期時代が14~22歳頃のできごとになります。
一番若い14歳だと仮定しても、このグラフィックの幼少期とみなすにはさすがに無理がある年齢ですよね。
もし、この設定通りに表を埋めれば、0章から7年後の2章のセリカは21~29歳頃ということになってしまうのです。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 382~390年 (今から十数年前) |
10歳頃 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 14~22歳頃 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
21~29歳頃 |
セリカの顔グラも年齢ごとに比較してみましょう。
10歳頃 | |
14~22歳 | |
21~29歳 |
21~29歳はいいとして、10歳頃と14~22歳が同じ幼い顔グラなのは違和感があります。
アルムの年齢設定にも違和感が生じる
記憶の欠片「遠き約束」にてルドルフがマイセンにアルムを預けるときの会話から、アルムはセリカの生まれた少し後に生まれていることがわかります。
よって、アルムもセリカと同じ年齢、もしくはセリカより1歳だけ年下ということになります。
つまり、14歳の幼少期時代をセリカと共に過ごしたアルムは、21歳までマイセンから村を出ることを許されなかったことになります。
これが物語の始まりの説明だったとしたら、さすがに違和感がありますよね。
となると、今まで得た情報のうち、いずれかが間違った情報であると考えるのが妥当です。
会話テキストの修正漏れにより矛盾が生じた?
先ほども引用した開発者インタビューの内容から、セリカが離宮で暮らしていた期間について外伝から設定変更されていることが分かります。
── セリカがもともと王女であることを知っているのは、『外伝』とは大きな変更点ですよね。
草木原 それはアルムとセリカが2章の終わりで衝突する動機付けをしたかったのが大きいです。そこで王族であるというバックボーンをつけたくて、10歳くらいまでは離宮で暮らしていたという設定にしました。
開発者インタビューより
もともと外伝ではセリカが生まれてすぐにマイセンが王宮から連れ出したことになっています。
おうけのひとたちは ドゼーしょうぐんによって みんな ころされました
外伝 ソフィア城での会話より
あと いきておられるとすれば うまれてすぐに マイセンさまが つれだしたという おうじょだけです
せめて あのかたが・・アンテーゼおうじょさまさえ いきていてくだされば・・・
外伝の設定に従って表を生めると以下のようになります。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 382~390年 (今から十数年前) |
0~1歳頃 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 5~12歳頃 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
12~19歳頃 |
0章でのセリカの年齢の下限を5歳としているのは、アルムとセリカが0章でスレイダー部隊と剣と戦っているからです。
0章ではマイセンがこれまでアルムとセリカに剣の稽古をつけていたことが語られています。剣の稽古の成果を活かして大人の兵士と戦える年齢であることを考えると、とても幼児であるとは考えにくいです。どんなに戦いのセンスがあっても少なくとも5歳以上ではあるだろうと思うので、下限を5歳としています。
これでそれなりに妥当な年齢設定になりましたね。
ちなみに、外伝ではアルムが16歳と取扱説明書に記載されています。
老騎士マイセンを祖父と信じる16歳の少年アルムは、彼の厳しい指導のもと剣の腕を上げ、今ではマイセン卿を打ち負かすことがあるほどだった。しかし、そんな明るくはつらつとしたアルムを見るたびに、マイセンは嬉しさと同時に、言い様のない悲しみにおそわれるのだ。アルムはマイセンの実の孫ではない。16年前に、理由あってある男からあずかった子供なのだ……。
外伝の取扱説明書より
この設定通りとするならば、2章のセリカは16歳か17歳となります。
開発者インタビューでは外伝本編の情報を掘り起こして本質をつかみ、自分たちの中でかみ砕いて、より掘り下げたことが語られています。
草木原 とにかく調査ですね。イズの中にも『外伝』当時のスタッフが残っていますので、当時のチームの雰囲気であったり、当時のディレクターが何を言っていたか、何を参考にしていたかなどをヒアリングしていきました。『外伝』は派生の小説などもいろいろ出ていたんですが、我々はどこをベースにするかを考え、やはり本編だろうということで、あまりそういった派生ものは見ずに本編の情報だけを掘り起こして本質をつかもうとしました。いったん自分たちの中で噛み砕いてから、より掘り下げていくことにしたんです。
開発者インタビューより
このことから、セリカの離宮滞在期間の設定変更が行われるまでは、外伝ベースで以下のような年齢設定になっていたと考えられます。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 387~390年 (今から十数年前) |
0~1歳頃 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 9~10歳頃 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
16~17歳頃 |
この設定であれば、ソフィア城のおばさんの発言は矛盾しません。
ここで開発者インタビューにある通り、セリカが10歳頃まで離宮にいた設定に変更されました。ここで、おばさんの台詞も「今から十年近く前」などに変更する必要がありました。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 382~390年 (今から十数年前) こっちも対応必要だった! |
10歳頃 変更された! |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 9~10歳頃 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
16~17歳頃 |
しかし、おばさんの会話テキストが修正されず、「今から十数年前」という情報がゲーム内に残ってしまい、矛盾が生じてしまったのだと考えられます。
- 最初は外伝の設定通りに会話を作っていた
- 途中でセリカが離宮にいた期間の設定が変更された
- おばさんの会話を修正しなければいけなかったが修正し忘れた
という流れであれば、このようなミスがあっても不思議ではありません。
ゲームデータの解析情報によるとセリカは17歳
ゲームデータの解析情報によるとセリカは17歳だそうです。
2章時点でのセリカの年齢を17歳とすると、表は以下のようになります。
できごと | バレンシア暦 | セリカの年齢 |
---|---|---|
離宮の火事 | 394年頃 (今から7年ほど前) |
10歳頃 |
滞在中のラムの村から ノーヴァ島へ旅立ち |
394年(0章) | 10歳 (幼少期) |
ノーヴァ島から旅立ち |
401年(2章) |
17歳 |
おそらく、エコーズでの本当の年齢設定はこの表の通りなのでしょう。
これなら、記憶の欠片「炎の中で」のセリカと、0章ラムの村でのセリカの顔グラが全く同じであっても違和感ありませんね。
まとめ
エコーズには時系列の矛盾が生じる情報が含まれています。その矛盾は以下のように生じてしまったのだと推測できます。
- 最初は外伝の設定通りに会話を作っていた
- 途中でセリカが離宮にいた期間の設定が変更された
- おばさんの会話を修正しなければいけなかったが修正し忘れた
ソフィア城のおばさんが語る「十数年前」を「十年近く前」に置き換えれば、辻褄が合う設定になるので、脳内変換してエコーズを楽しみましょう。
以上です。